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羽生選手 15~16年のシリーズの衣装は フェミニンじゃあない

20歳から21歳になる今シリーズは大人への変化かな

ショート「バラード」

まずは、ショートの「バラード」の衣装から。
昨シーズンと同じピアノ曲だが、振り付けは更に難しく構成された様子だ。
当然衣装も似たものだが、少しだけ違っている。

2014年度の「バラード」衣装
ブラウスは、薄地のブルー系でハイネック、ウエストと袖口からは濃いブルーからのグラデーションになっていた。
ラインストーンを散りばめ、ウエストでゆるくブラウジングさせている。
黒地にラインストーンを入れたタック状のベルトは、かなり太い。

ファンの目から見ると、シーズン始めの頃からブルーの色合いがだんだんと濃く変化して行ったようだが、ユフィはそこまでは感じなかった。

今シーズンの衣装は、似てはいるが「演技と同様に進化」させた形だ。
ブラウスの生地は昨年より少し厚手で、透け感はあまり無い。
ブルーの色味は濃くなっているが、ハイネックまでのグラデーションはブルー系というよりはホワイトに近いので、全体的にハッキリした印象を受ける。

【NHK杯フィギュア】男子ショートプログラムで羽生結弦の演技
27日、ビッグハット(撮影・桐山弘太)
袖口と両脇に金ラメ入りの三角形のポイントがデザインされ、ブラウジングされた裾からは、動きにつれて落ち着いた色合いの金にラインストーンを並べたタックベルトが覗く。
両手を挙げたポーズでは、かなりハッキリとこの金のポイントが目立っていて、力強さも伝わるような…。

ブラウスに散らされたラインストーンは、昨年度よりは控えめのようだが、色合いがブルー系の濃淡になっているのは同じようだ。

パンツはこのところブラックが多いようで、お気に入りなのか、動きやすいのか、目立つからなのか、誰か教えて…。

このバラード、なんとなくロマンチックな雰囲気があるのだが、「叙事詩・物語詩」また音楽でも「ものがたり的な歌」と言う意味があるのだとか。
特にショパンのバラードは、古い歴史物語を詠んだ詩に基づくとされていて、優美な流れだけではない様子だ。

12月の『題名の無い音楽会』で、「フィギュアスケートでの選曲」で演奏されたショパン作「バラード第1番」は、最後の方ではピアノの鍵盤を端から端まで激しく叩く激情的なもので、羽生選手が演技するスクリーンととあいまって、すごく感動的だった。

羽生自身が「このバラードの持つ曲想を、作曲した意図に沿い、ピアニストの指に合わせた心情を演じきりたい」という風に語った通りに、素晴らしく重なって見えた。
フィニッシュの羽生の鋭い挑戦的な眼差しは、この曲想を充分に表わしているのだろう。

今シリーズの羽生は『挑戦者』そのものだから、優しさや儚さが溢れる透き通ったブラウスより、金に支えられた強めの衣装の方が相応しい



フリー「SEIMEI」

お披露目のアイスショーの衣装と実戦の衣装とでは、似ているけれど微妙に違うようだ。
アイスショー用に3分にまとめた曲で、衣装もお披露目用のものだった様子。

【NHK杯フィギュア】男子ショートプログラムで羽生結弦の演技
27日、ビッグハット(撮影・桐山弘太)
和の音楽に合わせた平安時代の衣を、現代的にアレンジしたもので、地紋と呼ばれる生地の模様がはっきりわかる、少し厚手の白生地を使用。
その地紋を光る金糸やラインストーンなどで強調している感じだ。

全体的に細身に作られていて、特に袖が細く袖先は広がっている。
白地で下に重ね着した紫が、襟元と肩の袖の付けね、袖先に見えていて、アクセントとして若い緑が襟と肩、更に袖口の細紐にあしらわれている。

この衣装は、平安時代の貴族などの装束『狩衣(かりぎぬ)』と呼ばれるもので、現在では神社などの神官が身につけているもの。
陰陽師などが日頃から身につけていた衣だったらしく、また貴族達が狩や蹴鞠などの運動時にまとったようだ。
動きやすいよう広い袖口はくくり緒で縛るようになっていて、肩口も袖が後身頃に縫い合わせてあるだけなので、下に着た下着の色がしっかり見えている装束だ。

陰陽師の映画では、野村萬斎が激しく戦いの動きをしたり、寛いだりの際に、白の狩衣と紅や紫の彩が非常に美しく映えていたので、それを取り入れたのだろうか、非常に凝ったデザインになっている。

このお披露目の衣装は全体的に細身で、袖の肩の縫い合わせが微妙に異なっていて、脇下まで紫が見えている。
激しい動きが続くフィギュアスケートでは、肩の動きはとても大切だろうから、動きやすく工夫したのかな?

羽生選手の衣装でお約束にもなっているフリルは、ショー用の袖の先・重ね部分に紫色でハッキリと覗いているが、本番用ではあまり目立たないように思う。
ユフィは気づかなかったりだが、熱狂的ファンは見逃さなかったようだ。

優勝した羽生結弦のフリープログラム=28日、ビッグハット(撮影・桐山弘太)
白生地も本番用は少し薄手で、白ではなく日本古来の色合いの「白練・胡粉色・白磁・乳白色」と言う感じなのか、オフホワイトという感じだ。

白練(しろねり)とは、真っ白い練絹のような白色のことを呼ぶそうで、生絹の黄みを消し去った技をそう呼んだとか。
古代から神聖さを象徴する色として用いられ、近年では清潔で高貴な色として愛用されているらしいから、生地の艶としてはショー用の衣装の方が相応しい。

腰の部分はそのままタックをたたんで帯状に見せる工夫がされていたが、本番では金のベルト風の細い帯に変わっている。

薄手の生地になった分だけ地紋がないので、金の縫い取り風の柄をアレンジし、ブルーと青緑、金、光る素材や大きめの飾りも多く付き、華やかになっている。
テレビの再放送で確認したが、赤や青などのスパンコールも施されているし、背中には星型の飾りもついていた。

くくり緒をイメージしたリボンは、若い緑色から少しくすんだ緑に変化し、肩のアクセントになっていた若緑は、濃い緑に変わってしかも細く覗かせる程度になっている。
肩の紫の少し覗く部分にも、小さなラインストーンが光っている。


撮影【坂本清】
そして、最大の変化が黒い手袋だ。
確かに素手よりは、印を切ったり、結んだり、見得を切ったりする際には、動きがハッキリするのは確かだ。
黒いパンツとも調和が取れるし、「いらないじゃない?」と言う批判もあるようだが、重要なポイントにはなっていると思う。

この狩衣のアレンジで、ユフィが不満なのは狩衣の裾の短さだ。
「陰陽師」の映像などでも「ふわり」と翻って優美な趣があるのだが、あと10㎝長かったらもっと素敵だろうに…。

4回転を3回も飛ぶ構成では、動きやすい衣装がまずは一番と言うことかな。



エキシビション「天と地のエクレエム」

ショートとフリーの衣装が、今までの羽生選手のファッションとは違い、シンプル系だったことが熱狂的ファンには物足りなかったようだ。
中性的な「フリフリヒラヒラのフリル」と「華やかなカラー」が良く似合う彼には、らしく無いというのが評判を悪くしている様子。

デビュー当時の彼は、フリーの演技を全てこなす体力がまだ備わっていなかったから、滑り終えたときは、唇は真っ青で肩で息するような脱力状態だった。
華奢な体で美少年そのもの、長髪の似合う中性的な魅力がいっぱいだった。

年を重ねて体力的にも精神的にも成長し、今シーズンではついにショート・フリー合わせての330点を越え、世界未踏の位置に達している。
カナダへ彼を追っかけていたファン達は、「羽生結弦選手はもう神です」と言い切るくらい。

もう神になってしまっては、この先の上がる階段は無くなってしまうのに、ね。
ともかく凄い状態になった羽生選手、ファンの人たちには最高の幸せを与えたことにもなる。

そして、興奮収まらないリンクのエキシビションは、ファンならずとも目を奪われた彼らしい素敵な衣装で演技を締めくくった。

スポナビ
ファッション用語では、オールインワンかな、フランス風ならコンビネゾンと呼ぶのだそうだが、要するに上下が繋がった体の線がしっかり出る衣装。

ベロアの艶のある黒いパンツと繋がった上部分は、ブルーグリーンとブルーが基調の華やかなデザインで、腰の部分で上下交わっている。
袖先はもちろんフリル風で指にセットされ、上下に流れるように配されたブルーとグリーンの濃淡は、所々フリルを使用して立体感を出している。

充分に計算された透けて見える素肌にドキッとしたり、ラインストーンや銀など光る素材も豊富で華麗なことこの上ない感じだ。
しかも深く開いたノーカラーからは、いつも身につけている黒いネックレスが覗いていて、トータル感もある。

スポナビ

曲名の「天と地のレクエイム」とは、教会で死者のために歌われるミサ曲のことで、和訳なら『鎮魂歌』のこと。
東日本大震災を悼んで作曲されたもので、「花が咲く」と同様に彼にとっては大切な思いのこもった曲でもある。

低音が鳴り響くピアノ曲に乗って、鮮やかに舞う姿が切なくも美しい。
彼にとっては、決して忘れられないあの震災への鎮魂の舞いなのだろう。

本番ではあまり飛ばなかった「4回転ループ」を、このエキシビジョンではまあ成功させてもいるし、縁起の良い衣装になったのかも…。

ユフィの疑問は、この衣装どうやって着たり脱いだりするのかな?と言うこと。
脇にファスナーがあれば、広いノーカラーだし頭は通るから脱ぎ着しやすいのかも…。

ショートとフリーの衣装は共にハイネックだったから気にはならなかったが、ノーカラーで首筋がよく見えたから、ショートヘアの首筋のカットが気になった。
横一線で切りそろえられていたように見えたのだが、再放送のアップでよく見てみると、シャギーカットされた長めの後髪がはっきり見えている。

ずいぶん凝ったヘアカットなのだな、とちょっと感心したりして…。
もう少しロングだったら、優しい雰囲気がこの衣装とも合うかも知れない。
ビジュアル面ばかり書いたけれど、彼の真意は他にあるのかもしれないし、フリルの衣装だけで語れないとは思う。

彼の崇拝するロシアのプルシェンコも出場と言われている、次回のオリンピックは2018年の韓国平昌だが、それまでにどこまで進化するのか、またできるのか、興味は尽きない。



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