やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 鹿島灘はまぐりのすき焼き
02 八重の故郷 会津若松の「こづゆ」
03 明石海峡 いかなごの釘煮
04 千葉・九十九里 太巻き寿司 銚子蛤と、ながらみ
05 能登の調味必需品 いしる
06 春のご飯 大根の菜飯(なめし)
07 あさりで深川丼 あさりご飯
08 もんじゃは ゆらゆら波の上
09 秋田 ハタハタをおいしく
10 ちぎっては投げ の ひっつみ汁
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食べ歩き 全国家庭料理47選

09 秋田 ハタハタをおいしく

秋田名物 八森(はちもり)鰰 男鹿では男鹿鰤子(ぶりこ) 
能代春慶 桧山納豆 大館曲げわっぱ


 日本でいちばん元気が良くて、調子のいい民謡、秋田音頭の出だしです。県北のうまいものを歌いこんだもので、名物魚のハタハタ、ブリコ、納豆の元祖といわれる桧山納豆、そして春慶塗りの椀ものと、曲げわっぱの器と、食卓の様子を歌ったものです。

 この民謡の冒頭に歌われたハタハタ、世界遺産になったブナの森の白神山地を控える八森町はハタハタ漁の町。一時漁獲量が減って自主的に禁漁になった時期もありました。なにしろ、この八森町で同年代の方に聞いたところでは、小学生の頃、弁当を持ってくる生徒の半分以上はハタハタを料理したものだったというくらいだったといいます。
 白神山地とハタハタは縁のあるもので、2月中旬から3月にかけて、孵化した幼魚が外海へ出る時に必要な養分が、ブナの木や葉から海に注がれプランクトンを育てるのだそうです。
ハタハタ 生
鱗がないのが特徴。

ハタハタ漁の船ハタハタの荷揚げ
ハタハタ漁の船と魚の荷揚げ。
 魚の神と書くのは、茨城県の常陸から秋田に移った佐竹義宣公と一緒に日立沖で獲れたハタハタが秋田でも獲れ始め、公を尊んで神の字を付けた、と言われています。また、魚へんに雷とも書くのはね雷がなり始めるとハタハタが現れる事から付けられた、とも言われています。

 県民の魚、と言われるハタハタ。同じ東北では福島県の「メヒカリ」も県民魚といわれます。こうした魚ですが、なかなか首都圏でお目にかかることは少ないようです。なじみがないので調理法が分からないから、ということで流通が難しいのでしょう。こうした魚こそ地元で味わいたいものです。地元で料理愛好家として活躍している方に、いくつかハタハタを使った料理を作っていただきました。

ハタハタ寿司
 昔から冬の貴重なタンパク源として、各家庭で秘伝があるのだそうですが、魚を塩漬けにして三枚におろし、一口大に切って酢締めにし、ご飯や麹、野菜を混ぜ、重しをかけて漬け込んだもの。歯ごたえがありますが、骨を感じさせない癖のない味、私達にはこの料理法が馴染むような気がします。
 なお、塩漬けにしたときに出る汁を「塩魚汁=しょっつる」といい、これをだし汁にしてハタハタを入れ「しょっつる鍋」として味わうのも、この地方の定番です。
fハタハタ寿司

ハタハタの貝焼き
 鍋の代わりに大きなホタテの貝殻にしょっつるを入れ、これも秋田の名産である「じゅんさい」と一緒に煮立てたもの。もみじおろしでいただくのですが、実は私はこのじゅんさいが苦手で、豆腐、シラタキ、白菜、きのこなどと煮込んだ鍋のほうがなじめそうでした。


ハタハタの味噌付け焼き
 どちらかというと淡白な味のハタハタ、こうして味噌仕立てのようにすると、味噌の風味とハタハタかよくマッチします。


 そうそう、秋田の食に一言、冒頭の秋田音頭にでてきた「桧山納豆」ですが、納豆で有名なのは茨城県の水戸、といのは誰もが認めるところです。けれども元祖は桧山。「前九年 後三年の役」という奥州を舞台にした戦争、教科書で習っていると思いますが、この折、携帯食として兵士が持ち歩いた煮豆が発酵して納豆が生まれたのが、ここ桧山。その名も「元祖桧山納豆店」というのがあります。

 ついでに、そうそう。11月の初旬、築地場外で「全国ご当地鍋グランプリ」なる催し物がありました。ここに、鳥取県の代表で『ハタハタと冬大根の熱々鍋』が出店されていました。冒頭でも、日立沖で獲れたハタハタ、と書きましたが、秋田固有の魚というわけではなく、白神山地からの養分で大量のハタハタが獲れた事が、名産地となっていたわけです。鳥取ではハタハタを冬のグルメの逸品として売り出したかったわけです。
 これはテレビの番組で見たのですが、内容は「県の知名度の最下位からの脱出を目指す」、という一面もあるものでした。確かに、よくタレントさんを使ったクイズでも、鳥取県が四国にある、と言った答えが出たり、番組でもう一つ取り上げた徳島県が山陰にあるといった答えが出たり、なかなか認知度の上がりにくい県なのではあります。
 鳥取県が山陰にあるのが分かっていても、それでは、鳥取と島根ではどちらが北にあるか、というとちょっとまごつくこともあります。鳥取のほうが、秋田に近い、という答えを用意しておいたらいい、といったら鳥取県に叱られるかもしれませんが。

 残念ながら鳥取県の鍋はグランプリとはいきませんでしたが、多少の知名度アップには役立ったようです。冬の鳥取で、ハタハタ鍋を味わうのもいいかもしれません。
 番組で見たもう一つの情報。鳥取には、全国で唯一スターバックスが無い事で、ある種有名になっているのですが、これを逆手にとって、砂丘で観光名所になっていることをイメージしてスタバをもじって『スナバ コーヒー』なるものを始めたとか。

 地方創生が現在の内閣のウリ、いろいろな地方情報が届くのも、これからの楽しみでもあります。
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