やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 鹿島灘はまぐりのすき焼き
02 八重の故郷 会津若松の「こづゆ」
03 明石海峡 いかなごの釘煮
04 千葉・九十九里 太巻き寿司 銚子蛤と、ながらみ
05 能登の調味必需品 いしる
06 春のご飯 大根の菜飯(なめし)
07 あさりで深川丼 あさりご飯
08 もんじゃは ゆらゆら波の上
09 秋田 ハタハタをおいしく
10 ちぎっては投げ の ひっつみ汁
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食べ歩き 全国家庭料理47選

10 ちぎっては投げ の ひっつみ汁

「ひっつみ」は東北の風土の中で育まれた味です。季節ごとの食材を入れた具沢山の汁に、水でこねた小麦粉を「ひっつまんで」入れただけの料理で「とってなげ」「つめり」「はっと」とも呼ばれ、大きな椀にたっぷりと盛って、あつあつを食べるものです。
椀に盛られたひっつみ汁
どうだカズン、これでもスイトンかよ。

 口の悪いジャックの兄、カズンに言わせると“あれはお前、物の無い時代に、腹が減るとしょう油でも味噌でも、鍋に入れて汁にして、小麦粉こねて、ネギでも人参でも、そこいらにあるもの一緒くたに入れて喰った、代用食、水団(すいとん)だな。けっこううまかったよ
”ということで、ひっつみ汁には申し訳の無いコメントになってしまいます。(当サイト ジャックの部屋の 食べ歩き47選 の内08 もんじゃは ゆらゆら波の上でも悪口カズンが実も蓋もないコメントしてますのでよかったら覗いてみてください)

 もちろん、発祥はそのとうりで、昔は米の節約のための主食として、また農作業の合間「小昼(こびる)」として食べられたもの。今でも、ちょっとごはんが足りない時に手近な具で作る汁物として、各家庭でよく作られています。
 最近はこのひっつみにヒントを得て、南部せんべいを入れた「南部せんべい汁」が、いわゆるB級グルメのグランプリに登場して人気を得たりしています。

小麦粉をねる   小麦粉をねる 2   ひっつみとての小麦粉完成
この日のひっつみ汁の食材
この日の食材はごぼう、にんじん、干ししいたけ、油揚げ、鶏肉、かつおなまり節、長ねぎ。

小麦粉をのばして鍋へ
小麦粉が透き通るようになって出来上がり
小麦粉はこんな感じでちぎって伸ばして、鍋に。

 この「ひっつかんで鍋に入れる」作法は、先に書いた「もんじゃ」でも触れていますが、大分県の『やせうま』にも見られます。これは、まことに簡単なおやつで、鍋から上げた小麦粉を黄な粉や砂糖にまぶして、そのまま頂くもの。
 また、同じ大分の郷土料理として知られる『だんご汁』はひっつみ汁と同じように、いろいろな食材を入れた中に、ねった小麦粉を入れ込んだ汁ものです。

 こんなに簡単な鍋なので、もっと家庭で普及しても良いのではないか、とも思うのですが。ちょっとお腹が空いたからと、カップラーメンに行きがちな私達の食生活。ここにあるような、様々な具材があれば尚いいのですが、カズンのお達しのように、ちょっとした残り物でもおいしい、自家製ひっつみ、自家製だんご汁で小腹を、いや、一人だけのけっこう楽しい鍋生活だって可能、だと思われる盛岡の家庭料理のヒントです。

 思いついたのですが、こんなに簡単に鍋が出来るんだったら、『水団の素』なんて食品が出来ないだろうか。独身者には、小麦粉練る、なんていうのも面倒かもしれないから、餃子ていどの練り小麦粉が入っていて、スープは「味噌味」「しょうゆ味」「カレー味」「温まる生姜入り」「辛味のキムチ味」なんてどうでしょう。
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