やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 60歳代で仕事がなくなるあなたへ
02 いつだって 監督の目を意識しろ
03 誰にだって、過去はある
04 家に帰り着く前の酒は なぜこんなに旨いのか
05 五度目の就職 ブルーカラーだ
06 私は清掃員か 清掃夫か はたまた清掃師?
07 言葉で教える、難しさ 例えばさあ
08 重力でゲロをコラエル 清掃こそが運動だ
09-1 いっけねえ ぶっ壊しちゃった その一
09-2 いっけねえ ぶっ壊しちゃった その二
10 大 しながら流す 小 座ってする あなたどっち派?
11 今時はやらないけど ウンコには紙だ
12 転職 清掃のプロに一歩踏み出す
13 ヒワイ ゲロ ウンコ 話の合う おばんたち
14 皆さん、床に落とした物は拾いましょう
15 口笛ふいてバキューム掛け 掃除に音楽は欠かせない
16 タバコとガムの捨て方 ゲロの吐き方 お教えします
17 でも しか じゃ掃除はできないぜよ
18 あとがき
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TOP > ジャックの部屋 > からだにいい「清掃人」入門体験風

からだにいい「清掃人」入門体験風

16 タバコとガムの捨て方 ゲロの吐き方 お教えします

第十六章
愚痴の四つも言いたくなる

“すこしは掃除をしている者の身になって考えてくれよ”と、思わず愚痴を言いたくなることが少なからずある。まず、たばこ!

 外回りの作業はビル周辺に散乱するごみを集めてから、水洗いして窓を拭く。たばこの吸い殻はどこでも迷惑なものだが、ここではビルの石だたみと道路の間の溝、それも溜まり水に落ちているたばこだ。この溜まり水は、私たちが水洗いをした後に排水溝に流れきれずに残っているもので、雨の翌日などは多少多くなることがある。私はたばこを飲まないが、多分たばこの吸い殻を捨てる気分になったとき、水に落とした方が完全に火が消える、という気が働くのだろう。

 このたばこ、ほうきでは取れない。最近はフィルターのついたものが多いのだろう、この部分が水に溶けずにふわふわと浮いている。一つずつごみとり のはさみで取っていくのだが、たばこの本体は〝茶色のぼうふら〟のように水に遊び、ちり取りに放り込んだフィルターはゴミ袋に入れるときも、ちり取りの奥にへばり付いて出てこない。小さな水たまりに吸い殻が集中しているから、狙いすまして捨てていくのだと思う。

 そうかといって、たばこの火を消すのに踏みつぶしてくれればいいかというと、これも困る。おもいっきり靴で踏みつぶしたたばこは、ぺったんこに石にへばりついていて、ほうきで掃いても、ちり取りに入っていかない。ちょいと靴の先で浮かしてから、アイスホッケーのパックをスナップショットするよう に、30センチ程の間をあけたちり取りにシュートする。細かいようだが、ちり取りとタバコが近すぎると、ちり取りと路面の隙間に入り込んでしまうのだ 。
 で、私としてどうしてほしいか、と言われれば、ポイ捨てをしないことにつきるのだが、百歩譲れば、右手に持ったたばこは左足をちょいと内側に持ち げて、靴の裏でたばこの先端の火を消す、水たまりに捨てずに、柱の影の目に付きにくいところに捨てずに、何気なく、足許に、素直に捨ててくれるのが望ましい。

 そういえば、この頃、駅のコンコースなどで床にくっついたガムをヘラでこそげ取っている掃除のおじさん(ふしぎですが、ガムを取っているおばさんて 、あまり見かけません)見ませんね。
 子供がガムをかんでいるというシーンもあまり見ない、とも思い、ガムは今、焼き肉屋で勘定を済ませたときにいただく、というくらいにしか口にすることがない、とも思う。ガムの消費の動向が、少し変わってきているのかもしれない。 
 もしかすると、焼き肉やのある周辺の通路には、まだ案外ガムがこびりついているのかもしれない……と思い当たったのは、外回りの清掃でガムの除去が案外多いことなのだ。このビルには焼肉店は無いが、にんにくのすり下ろしの容器がサービスでカウンターに置いてあるラーメン店はある、カレー店もある。

 歩道よりも白く、口からこぼれおちた(そんなはずはない、ブドウの種を口から飛ばしたり、サクランボの種を飛ばしたりする、昔の私たちのお行儀からは考えられないゲームも、まあ大目に見るけれど、ガムは間違いなく、味が無くなったり、噛むのに飽きれば“ぷい”と足許にほき出すに違いない)ガムもあれば、2~3日掃除の目をかいくぐって黒い固まりとなったガムもある。しかし、掃除をするには案外造作はない。少しの水を上からしたたらせて、ケレンでこそげばすぐに、義歯にへばりつくガムよりは容易に床から離れる。

 このシミと見まがう直径3㌢ほどのガムだが、ケレンでシコシコと削り始めると、ふわり、と……フルーツ風のガムの香りが、このシミから漂うのをご存知だろうか。私たちにだけ経験できる香りのサービスなのだが、そのまま口に入れれば口腔に噛んだガムの香りがまだ広がるのではないか、と思われるほどなのだ。何とガムの香りの保ちのよさよ! 私たちはガムを噛んだとき、味がなくなってきたからこそ、ポイと吐き出す、いや紙の中にだが、何の未練もなくガムとおさらばしたはずなのだが。

 あなたは缶コーヒーを飲んだとして、完全に空になるまで、缶をかたむけてすすったことがあるだろうか。缶飲料にも多種あるが、ゴミ容器に捨てられている缶は圧倒的にコーヒーが多い。このコーヒーの空き缶に要注意だ。飲み残しの何と多いことか。自分で飲むときもそうだが、飲み始めはゴクゴクと 、一息つくとちょっと飽きてきて、最後はもちろん缶の縁によどんでいる飲みにくい(飲めない)残量は残して捨てることになる。

 私たちが一応、分別された『缶』のゴミ容器からビニールごと空き缶を取り上げるのだが、日によって4~5本しか入っていないことがあって、ゴミ袋がも ったいない、というより、取ったビニール袋を新しいものに取り替える面倒を優先して、缶だけ取り上げて別の袋に移そうとする時に必ずといっていいほど、飲み残しのコーヒーが、この時ばかりは実に上手に開け口からこぼれるのだ。おばさんの一人はこれで、近くにいた事務所の方の服にコーヒーをかけてしまったこともあるくらいだ。

 ペッボトルの飲み残しはあまりないし、残量があれば分かるし、たいていはキャップをはめられたまま捨てられているので、処分の途中で浴びてしまう ことはほとんどない。コーヒーを服にかけないように、1~2本ならば慎重に手で移すが、5~6本も入っているときは迷わず袋ごと捨てるようにしている。

「オシッコとウンコ(の話)」はもう済ませて、やれ、グチのトリはなんと言っても「ゲロ」になる。
 私が仕事場に行くのに降りる最寄り駅・渋谷に着くのは早朝5時40分。宮益坂方面のビルの上に光りが差し始める頃が、いちばん気持ちのよい朝の季節になる。日が昇る時間が早くなるにつれて、駅へ向かってくる朝帰りの一団も除々に多くなってくる。
 まだ煌々と電気の輝く町中に向かって歩いていくのは私くらいか、横長になって歩いてくる連中と肩がぶつからないように気をつれなければならない。 駅方面から急ぎ足で歩いている私は、さぞかし、居酒屋に忘れ物でもして取りに戻るオッサンぐらいに見えるかもしれない。

 週末ともなると、通りでは〝小間物や〟を開いているのも何人かいる。仲間に背中をさすられながら口を半開きにしたままあえいでいる者、横になられて途方にくれている連れ、全てに見放され(“かまってられねえよ、そのうち起きれば自分で帰るだろう”なんて言われて放置されたと思われる)シャッ ターにもたれかかって見た目気分よさそうに眠っている男……。
 こんな日の仕事場の周りには、〝小間物店〟を閉じないままの跡が必ず残されている。いつもは警備員がオガクズを振りかけてくれて、〝生〟の状態が見えないようにしてくれているのだが、土曜日に外回りの担当になっている私は、後に述べる事情で、生のままにしておいてくれ、と頼んである。

 その量や質によって片づけ方も違うのだが、いちばんやっかいなのは、〝本店、支店三店セット〟と私が呼んでいるゲロの跡!
 警備員が“ジャックさん、今朝は3箇所もやられちゃったんですよ”というのがこの場合。見に行くと、壁沿いの柱の陰に大量のもの、4~5メートル離れてもうひとつ、よく見ると歩道にある排水溝の辺りにも、内容物はどれも同じようで、どうやら同じ人間の苦悶の跡が忍ばれる。

 思うに第一波は、がまんを重ねてきたが限界に達して、それでも壁に手をかけて出した。気持ちは悪いが気分は良くなりそうだ、しかしズボンの裾と靴にはおつりが付いているのは家に帰ってから気づくことになる。収まったかに思えたがまだ残っている、歩き始めたがやっぱりだめだ、もうこの時は涙も 出てきて苦しい、胃液も混じる、しゃがんでやるので広がりはないがねばりがある。
 おそらく1~2分の間はそのまま自分のものを、涙でにじんだ目で見つめて放心していただろう。やっと気を取り直して歩道に踏み出したが、いけない、口の中をさっぱりさせようとペットボトルの水を飲んだら逆流しそうだ、で最後のひとつかみを戻して、ようやく白み始めた空でも見上げる余裕が出てきた
……そんな涙ぐましい行動を察しながら処理にかかるのだ。

 ワカメラーメンがメンタイコスパゲティーに。それが、私がオガクズを断るようになったきっかけだ。〝小間物店〟の扱い商品はどういうわけかラーメンが多い。経験は誰にでもあるが、飲んだ後、腹は空いていないのに妙にラーメンが食いたくなる、結果だ。この日のモノは明らかにそれと見えた。オガクズでカバーできない部分にも見て取れたし、警備員も“みたいですね”と保証した。
 大きめのバケツで3~4杯も流せば排水溝に追い込める、と読んでバケツを二つ。最初の一杯でソレは劇的な変化を遂げた。水をかけられた細かい黄色だったオガクズは赤く染まり、ワカメは床にへばりついて床と同色化し、メンはオガクズをまとわりついていよいよ白く流れた。私にはソレは一瞬〝メンタイコスパゲティー〟に違いない、と眼を疑うようだった。しかも、メンタイは3~5倍もの量に増えて広がってしまった。

 私は急いでホースを取りに走った。バケツの水では流しきれない。散水栓から20メートルもホースを引っぱって流し始める、まずメンタイコが流れていき、スパは除々に流れ、ワカメは水勢を強くしてようやくはがれ始めた。処理するのに20分あまり、メンタイだけは二カ所の排水溝にまでまたがった。

 この日サブリーダーのおばさんに報告“ジャックさん、これからはワカメラーメン食べられないよ”と言った後で意外なことを言われた。“私はウンコもゲロもいやだけど、いっちばんいやなのはエレベーターの中のタンツバだよ”と。そういえば私はまだ未経験、いつ遭遇するかと気がきではない。
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