やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
読切
TOP > ダイニング > 季節のもの

梨娘 現る

梨売りの少女
買った梨 大皿に余る
砲丸投げのような健康少女と梨のような砲丸、じゃなかった、砲丸のような、梨

 10日ほど前、人気のゆるキャラ「ふなっしー」が、地元の梨のPRに青森くんだりまで出かけた、というニュースを見て、急に梨が食いたくなった。

 我が家では三人の休みが同じになった日(まあ、土、日に私が休みになった日なのだが)は、4時にお茶タイムになります。この時はどこからともなくマサムネ君もやってきて、私の隣に座り、ナニガシカを待ちます。8割がたは洋風スイーツ、時々和菓子となります。コーヒーはサーヤが好みを聞いて、豆を挽いて淹れてくれる本格的です。
 果物はあまり出ません。お茶を飲む、ということなので、果物にお茶はない、ということもあります。

 私の果物暦、というのもおかしいのですが、どこかで書いているので重複しているかもしれませんが、子供の頃、我が家の庭には柿木が数本あり、色づいた頃は、もぎって、ズボンでピカピカに磨いてカリッと食べるのが日常。イチヂクやザクロやナツメもあって、適当なおやつになっていました。だからか、今でも柿は買って食べるもの、という意識がありません。当時、リンゴは「デリシャス」という実の柔らかいもの、「紅玉」という小ぶりのちょっと酸っぱいものくらいしかありませんでした。
 桃は実が堅くて甘さとは程遠く、梨は芯が大きくて、うっかり芯の近くまでがっついて食うと、頬をすぼめるほど酸っぱい、といった按配。ぶどうは細かい粒ばかりで、一粒ずつ食うなんてこと出来ずに、兄達は適当に口に放りこみ、くちやくちゃ噛んでは種と皮を吐き出す、という品のない食い方をしていたものです。要するに“くだものは旨い”という時代になかったのです。でもって、未だにイメージを引きずっている不幸な世代にあるのです。

白井周辺の梨農園
白井の近くの梨の栽培農家で

 でも、ふなっしーを見て、梨を食いたくなった。それは土曜日の夕方で、明日の休みは渋谷へ本を買いに行くので、角の果物屋に寄ろうかな、と思いながら、夕刊読みながら水割りやっていた時。インターフォンの音。この時間、ネット通販大得意のサーヤへの宅配がくることが多いのですが、なにやら下でユフィが女性の声と話しています。物売りならインターフォン越しに断っているはずなのに、外へ出て話しているようです。
 私のデスクの前は出窓になっていて、玄関が真下。覗いてみると、台車に函を乗せたお姐さんが。“桃はあたりはずれが多いからあまり買いたくない”なんてユフィの声が聞こえます。よく見たら、桃の函の横に梨の函が見えます。“やった”と思って下へ。“梨なら買うぞ”と声を掛けたら“それならあなたにバトンタッチする”とユフィは中に。

 話がいろいろ飛んで申し訳ないんだけど、私こうした「物売り」にもともと弱いのです。ユフィがいればいとも簡単に断るのですが、留守だったりすると困ります。“障害者支援で、ハンカチ三枚で千円なんですけど”なんて人がくれば、ま、いいか、と使いもしないハンカチ買っちゃうし、宗教のお勧めもまた。私はもともといろいろな人に話を聞いて記事を書く習性なので、つい話しかけてしまうのですね。向こうも話したい人ですから30分も話し込んじゃいます。挙句の果てに“教えをまとめた冊子があります”なんていわれて、後で読みもしない冊子を買っちゃったりします。
 個人で仕事場を道玄坂の雑居ビルで始めた時も、いろんな物売りが来て困りました。一度は、酒のつまみになりそうな裂きいかや、ナッツなど3.000円あまりもかってしまい、おまけにこの姉ちゃん、“お礼に唄歌います”なんていいながら、彼女の地元の民謡らしい歌を歌いながら踊り出しちゃって、ドア開けたままだったので、よその事務所の人が覗いたりして、えらい目にあっちゃったことまで思い出しました。

 で、本題。『梨売り姉ちゃん』。さっきまで日向で梨もいでいたみたいな、健康日焼けもニコニコと、おっきな梨取り上げました。中学生が砲丸持ち上げてるようです。千葉の白井(しろい)からの出張とのこと、といっても台車引いて電車に乗ってきたわけではなく、この手の人たちは車で何人か乗せてきて、“それ行け”とばかりに手分けするのです。
“三つくらいかな”と私、“四つはだめですか”と姉ちゃん、駆け引きです。いつもなら“じゃ四つ”と言ったところの私ですが、この手の物売りには百戦錬磨、四つ買えば一つは食べきれずに腐らせてしまうのが目に見えているので、抵抗です。“じゃ、三つで、今お値段出します”と計算機。計、1.200円程度、安くないよなあ。てもまあいいか。その代わり、写真撮らせてよ、と、冒頭の写真。きちんと領収書、書いていった。こういうこと、いまはうるさいのかもね。

幸水が大きく実っている
梨栽培の農家で、枝が折れそうだ

 買ったのは『幸水』。
「二十世紀」といわれる青ナシに対して、赤ナシと言われる「幸水」は、少し赤みがかって来た頃が食べ頃といいます。
 おいしい食べ方、保存の方法もネットで検索できますので、そちらも、どうぞ。

たくさんの梨
所謂観光梨園では、個人で収穫は出来なかった、切り所が難しいのかも。
▲ページTOP