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和食世界遺産 日本の家庭料理を紹介する本

 ユネスコの無形文化遺産に登録されることになりました。無形文化遺産は世界各地の祭礼、慣習などを登録して保護する制度です。
 和食は日本政府が十二年に登録を申請したものです。和食の伝統というと、私たちは会席料理や加賀料理のような郷土料理を思い浮かべます。当初、申請を進める委員の方たちもそんな方向を考えていたようです。ところが、同じ時期に申請を進めていた韓国の宮廷料理が申請を受けることが出来ない、という委員の方たちにはショッキングなニュースに接して、方向転換。あくまでも保存、保護を目的とした和食へと、舵を切ることになり、今度の登録へとなったのがいきさつです。

 今までに遺産として登録されているのは、「フランスの美術食」(といっても誰でも知っているフォアグラのようなものは含まれていません)、「トルコのケシケキ」(麦がゆ)、スペイン、ギリシャなど地中海沿岸四か国が申請した「地中海料理」の四件のみです。いずれも国の代表的な有名料理ではなく、マーケットで誰でもが手に入れることができて、どの家庭でも調理できるものが中心です。

 こんなニュースに接している頃に、飲み友達から一冊の本が送られてきました。なんでも、奥さんが通っている歯科医院の待合室にあった本なのだそうです。私たちがサイトを開いているのを知っていて、紹介してみては、と歯科医院にお願いしてもらってきたものなのです。
 確かに、これは文化遺産満載の書籍です。全国47都道府県の家庭料理を取材して、レシピと、食材、風土などのエピソードを紹介したものです。

『日本の味めぐり 家庭料理と食材紀行』
三好 功郎 由紀子 共著  開発社
オールカラー199ページ  1600円(プラス税)

和食1 表紙

 一部を紹介してみます。
岩手県・岩泉町に伝わる「あんずきばっと」。岩手には郷土料理として「ひっつみ鍋」や、最近話題になっているいわゆるB級グルメとしての、南部せんべいを鍋に入れる「せんべい汁」などがありますが、これはとても素朴な料理です。あんずきは小豆がなまったもの、ばっとはハットのこと。はっととは、そばを打って平たくしたものを細切りにせずに短冊状に切ったもの。お汁粉に蕎麦の短冊が入っているといったものです。はっととは、昔、蕎麦が貴重だった時代、口にするのはご法度だったところからいわれたようです。宮城県にはそのまま「はっと」という料理法かあるようですし、甲府地方の名物料理「ほうとう」もはっとがなまったもの、という説もあるようです。
和食2 あんずきばっと 和食5 むきそば作り方

山形県の酒田市には「むきそば」があります。そばの表皮を取り除いて実をむいたものに、冷たいかけ汁を入れたこれもまた素朴な味わいのもののようです。学校の給食にも出ることがあるようで、子供たちは「ちびっちゃいそば」といって喜ぶそうです。
和食3 むきそば 和食6 作り方

冷たいかけ汁といえば、宮崎県の「冷や汁」(地元ではひやしゅると言っています)が有名です。宮崎料理として専門店でも人気のメニューになっているほどですが、熱い麦めしに冷たい汁をかけたもの。ただ、このかけ汁は、作る家庭でも千差万別で、宮崎の地域ごとに変わった味が作られるのだとか。味噌味の汁に干し魚や薬味をたっぷり入れるのが共通の味。次代に残したい料理として、いつも人気のトップクラスに挙げられるものです。
和食4 冷や汁 和食7 冷汁 作り方

 この他仙台市の「ずんだ餅」長野県・木曽町の「ほう葉めし奈良県御所市の「茶がゆ」和歌山県那智勝浦市の「さんまずし」島根県松江市の「寒しじみの炊き込みご飯」福岡県の「がめ煮」などなど。どの料理も日本独特の食材を生かして、伝統の味と調理法が紹介されています。
 和食の文化遺産が、全国にあることがよく判る一冊といえます。
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家庭料理と食材紀行 日本の味めぐり

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