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現在刻語事典

其の十壱 タカタ チャイルドシート シートベルト

 タカタ(株)が6月19日、民事再生法の適用申請を地裁に申請、受理された、と朝のトップニュースが伝えました。主力商品のエアバッグによる事故が、欧米で相次ぎ、膨大なリコールが発生、一兆円を超える負債が発生することになることが判明した、と。

 ジャックは経済のことにはからきし疎くて、おまけに、車は運転免許も持っていないくらいだから、エアバッグについても、その概要程度しか分からないのですが、関係記事の中で、チャイルドシートと、シートベルトに関しては業績堅調で、別組織で運営していく方向、とあって、チャイルドシートには思い入れがあって、ジャックにしては珍しい経済ネタに触れることにしたのです。

 タカタがチャイルドシートを開発・販売していく際の、所謂「販売ツール」を作ってほしい、と電通の親しい担当者から要請があったのです。なぜ、こんな大事な仕事を、個人事務所の私に依頼してきたのか。
 当時の販売促進ツールの主なものは、所謂「ページ物」といわれる「雑誌風」の造りの紙媒体が使われていました。現在でこそ、企業に限らず、ジャックが通い始めた歯科医も、アムール君がお世話になり始めた動物病院も、ネット検索ができるホームページを持っていて、新しいニュースは随時更新できています。なにを隠そうこの「やま玉」だって個人のホームページになっている訳です。

 私は出版社の勤務の後、編集プロダクションを経て、個人で編集会社を運営していく過程で、様々な企業の会社案内、団体の機関紙、記念誌などの製作を手がけてきました。当時、電通にはこうした「ページ物」を扱う部署があまりなくて、「PR誌」の仕事もいろいろ引き受けていました。
 そんな縁で声がかかりました。依頼の内容は「チャイルドシートに関して、親子で見られるもの、子供が見ても分かるもの」というものでした。こうした作業を受けた場合、まず製作するものの概要を企画書にして提案、電通担当者の目を通した後でビジュアルイメージを製作して、企業にプレゼンテーションするのが一般的な方法です。しかしこの場合、依頼の内容は具体的になっていましたので、初めからビジュアルで提案しよう、と担当者と決めていました。

 私の頭の中にあったのは、ずばり「絵本」。それもコンパクトなサイズで子供でも手に取りやすいものにしよう、ということでした。また、絵本造りの作者もこのとき念頭にありました。当時、絵本出版の大手「福音館」でいくつか作品を出版していた「なかの ひろたか」さんでした。実はなかの氏の奥様は、ユフィの出版社時代の同僚で(今でも親交があります)、私は今まで仕事上のお付き合いはなかってのですが、紹介してくれるよう頼むことにしました。

“このところあまり仕事したくないみたい”なんて奥様が言うので、ちょっとプレッシャーでしたが、とにかく会ってくれることに。絵本作家さんは、当然出版社の依頼によって仕事が始まるのですが、なかの氏はご自分のイメージで作品を提案していく場合も多かったよう。そして、今回のように、かなり具体的な内容が決められている場合の作業はほとんど受けたことがなかったようでした。
 当時、サーヤと同い年の男の子がいたこともあって(なかの氏は私と同じで車に縁のない生活だったのですが、仕事の内容には興味を持ってくれたようです)。とにかく引き受けてくれることになりました。ただしメーカーに出向いて打ち合わせなどはイヤ、とのこと、これは私が全て窓口になるという条件でスタートすることに。

 話が前後しますが、私たちが48年間住んだ世田谷を転居することになって、まず困ったのが「本をどの程度残すか」ということでした。私の場合、小説類はまず読み返すことがないだろう、ということで廃棄。結局、大きな事件を扱ったノンフィクション。評論や評伝類、私が手掛けた書籍、そして愛着のあるPR誌、記念誌など数十冊でした。その中で大事に持ってきたのが、チャイルドシートをテーマにした絵本「みんなまえにとんでった」です。

 百聞は一見に如かず。どんな展開で本が造られたのか、昔の絵本のページを繰って、ご紹介することにします。


●表紙 右は並製(本文と表紙と同じ紙質が使われている)、一般ユーザー向け。左は堅牢製本・ハードカバー製。小児科の病院などで、何人も何回も回覧できるよう作られている。
上下左右それぞれ156ミリ。
























 同時に作られたのが、「母と子の安全読本」と銘打たれた、チャイルドシートの啓蒙用ツールです。それぞれの専門の立場から、車雑誌の編集長、ドライバーキャリア10年という女性、医師の立場からの女医さん等から原稿を貰いました。



チャイルドシート着用していなかった場合の、車輌事故の実例報告と、チャイルドシートを着用していて事故が軽減された例を実例として取り上げました。この取材は警察庁の広報課で実際の例を紹介してもらったものです。

随分前に作られたツールですが、最近子供を前に乗せて運転させていて検挙された者がいたり、今の時代にもドライブに細心の注意を促すに格好の誌面になっています。



 先にも書きましたが、私は経済にも車にも詳しくないのですが、チャイルドシートは6歳までの子供には着用が義務つけられるようになっています。が、28年度に乗車中に死傷した6歳未満のチャイルドシートの使用率は75.2パーセント。死者9人の内7人はチャイルドシートを使用していなかった、という記事が最近見られました。
 また、ネット販売の製品には国際基準を満たしていない安価なものがあり、事故が多発していると、注意を呼びかける記事も見受けられました。タカタの経営破綻の記事の裏側で、わが子に交通災害が起きないよう、改めて注意喚起されるといい、と思うのですが。
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