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ゼロ戦で逝った特攻兵 知覧特別攻撃隊の会館でのこと

 ジャックの年代だと、戦時というものは全く体験のないものです。
 兄のカズンは、幼児に家の庭に掘られた防空壕に家族で避難した記憶があるそうです。その上の兄三人はそれぞれ、戦争での、何らかの経験を持っていて、私が大きくなってから折につけ、教えられたこともいろいろでした。

 夏の盛りになると、各種の報道で戦争の記事が多くなるのもいつものこと。私は、戦争そのものは知らないけれど、日本人として、行っておきたい(訪ねておきたい)ところが三箇所ありました。 
 広島の「広島平和記念資料館」 沖縄の「平和記念公園」「ひめゆりの塔・資料館」 そして東京・両国の「東京都慰霊堂」です。そして、出来ればこの他に長崎の「平和公園」と、鹿児島・指宿の「知覧特攻平和会館」でした。


●広島 原爆死没者慰霊碑から原爆ドーム ●ひめゆりの塔 資料館入り口

 特攻
●左 長崎・平和公園から見る浦上天主堂
●右 両国 慰霊堂の近く・旧安田庭園


 特攻平和会館を除いては、仕事での出張の折、また旅行の時に訪れていました。「知覧」はさすがに、鹿児島に行った折もなかなかあしを伸ばせないところであり、いやいや、足を伸ばしてでも行かなければならない所ですが、チャンスがありませんでした。
 数年前、指宿の地元金融機関の取材で、観光名所の砂風呂、黒牛料理、開聞岳などを見て午前中に仕事が終わり、鹿児島へ戻ろうとして、知覧が頭をかすめました。もう一度取材の担当者のところに戻り、知覧に行けるか調べてもらいました。バスしか方法がありませんが、いちばん速いバスで行き、知覧の滞在が約二時間で帰りの最終バスに乗らなければならないことが分かりましたが、とにかく知覧へ。

 着いて運転手に所在を聞いたら“山道を左の方へ歩いてください、20分ほどかかります”。これは、見学1時間半もないぞ、と思いながら急ぎ足で山登り。到着したのは桜並木と石灯籠の続く道でした。『散る桜 あとの桜も散る桜』と、桜を愛した戦士たちの慰霊のために1028の灯篭を建立する事業です。各灯篭には飛行服姿の地蔵が彫られていました。

●桜並木と石灯籠 そして飛行服姿の地蔵


●特攻銅像の建つ前庭 知覧特攻平和会館

 取材担当者から聞いていたのですが、会館を訪れた人の大半がここを出てくる時には、悄然として、涙をふきながらの人も多いとか。展示場の中央には一人乗りの飛行機・〔飛燕〕(実物)が置かれています。壁に沿って遺影や遺書が並べられています。
 これは一日かかるぞ、と思いましたが、とにかくいくつかの遺書などを読むうちに、胸がいっぱいになってしまいました。ほとんどの兵士が18歳から20歳前半、少し年配の兵士がいますが、これは隊長クラス。中身に胸うたれるのももちろんなのですが、それぞれの遺書に書かれている文字の達筆なことでした。昔の若者はこんな字を書いていたのかと、私はむしろそのことに驚きました。

 一日かかるかと思ったのは間違い、と言っては当たりませんが、これ以上資料を見ていられなくなってしまいました。ウイークデイの午後も遅くなって人の気配もなくなってきた館内にもいたたまれなくなり、ロビーへ。ここで、入り口に描かれた絵に初めて気が付きました。入る時には全く気が付かなかったのですが。

●ロビーに描かれている知覧鎮魂の賦(知覧特別攻撃隊 本誌口絵からの複写)
 特攻機から、六人の天女によって天に運ばれていく特攻隊員の姿が描かれています。私はこの絵を見て、胸のつかえが落ちるような気持ちになりました。しばらく絵の前に佇んでいました。そして、誰が描いたものかと、よく見ましたがサインや表示がありません。
 小さな売店があったので、おばさんにそのことを聞いてみたのです。売店のおばさんは、いきなり展示物の中から「見本」と大きくテープで止められた本から、テープをひきはがして“これを持っていきなさい”と私にくれたのです。なぜ、そんなことをしたのかも分かりませんでしたが、私は丁重に礼を言って、いただいてきました。


●表紙に白いキズがあるのは「見本」の紙のテープをはがした跡。

『知覧特別攻撃隊』 村永 薫 編  発行・ジャプラン 定価1.000
の本がそれです。兵士の生活、遺影、出撃の様子、遺書などの資料が多くの写真に収められており、巻末には全ての出撃兵士の名簿が掲載されています。
 この名簿を見ると全てが、尉官(少尉、中尉、大尉)であり、少数ではありますが佐官(少佐、中佐、大佐)があります。兄たちの話だと、当時佐官ともなれば部隊長以上、神様みたいな存在だったとか。若くて尉官というのは、いかに優秀な兵たちであったか。特攻で散らなかったら、どんな人になっていたか。

 そして壁画の作品『知覧鎮魂の賦』も収められていました。
「6人の飛天(飛ぶ天女)が紅蓮の炎をあげている隼の機体から特攻隊員の魂魄を昇天させようとしている図で、宮崎市の画家、中矢 勝好氏の作である」 掲載誌より。

 帰りの桜並木を急ぎながら、私がまだ中学に入る頃にカズンに連れられて名画座へ見に行った映画『雲流るる果てに』 家城 巳代治 監督作品のシーンをいくつか思い出していました。特攻隊員の日常から訓練、出撃、戦闘までを扱ったものですが、私には刺激の強かった映画で未だにいくつかのシーンが頭から離れません。
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 また、さっき見てきたばかりの開聞岳が、出撃する兵士たちが知覧を飛び立ち、戦地へ向かう時、日本本土との別れの地として、一様に飛行機の翼を振って別れて行ったという説明を聞いて、菜の花満開から見たすばらしい開聞岳がまた、悲壮なものに思い出されたものでした。

 私が開聞岳を見たのは1月下旬、もう菜の花が満開で、月末には恒例の菜の花マラソンが行われるとか。その後は、畑はソラマメに植え替えられるそうです。五月の私のつまみには登場する、大好物のソラマメ、春になるたび、この開聞岳がおもいだされるのです。
 今年の夏は、宮崎 駿監督の『風たちぬ』が評判を集めています。日本の戦闘機の珠玉といわれた「ゼロ式戦闘機」(通称ゼロ戦)の生みの親である、堀越 二郎がモデルになっているとか(私はまだ未鑑賞だが)。戦争後期、ゼロ戦が特攻機に使用されたのを嘆いたといわれます。
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