やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 生まれて半年の投了 猫の隔靴掻痒
02 猫も 「世界ネコ歩き」が好き
03 カエル じゃないよ アムールだよ
04 私しゃ も少し 背が欲しい
05 ねこ のんじゃった ?
06 ある日 スズメがやってきて
07 胸焼け 生野菜食いたい
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ベンガル猫アムールのある日その時

06 ある日 スズメがやってきて

 だれが風を 見たでしょう
  ぼくもあなたも 見やしない
  けれど木の葉を ふるわせて
  風は通りぬけていく

  
  作詞 クリスティナ・ロセッティ 訳詩 西條 八十
  作曲 草川 信

ボクはベンガル猫のアムールです

 ボクはまだ、部屋の外のことを知りません。この家に来てから、もうすぐ一年になりますが、今まで家の外に出たのは二度だけ。それもケージに入れられて、動物病院に行ったときだけです。その時も、外は見えなくて、ゴーゴーという怖い音のするばかりで、病院に着いて先生の前に行ったときも、ケージの中に固まってしまって、先生や助手の女の人に笑われた、とジャックお父さんが言ってました。

 ボクの家は、毎朝サーヤお姉ちゃんが出かける時に、お父さんに抱っこされてお見送りする扉と、反対側の明るい大きな窓がある部屋があります。ここは、毎日のように、ボクがご飯の時に一緒に用意してくれる飲み物とおなじものを、お父さんが窓の外に出て、いくつもの入れ物に注いでいるのが見えます。
 とても楽しそうなのですが、ボクはそこに出してもらえません。時々、窓の隙間から顔を出しそうになると、叱られます。
 
 これは、お姉ちゃんから、お父さんとお母さんに言われているのだそうです。万一、外に出ると、ぼくが嬉しくなって、花壇から塀の上に上ったり、手すりの隙間から体を乗り出して、下へ落ちたら大変だから、というのです。ボクがそんなことをするかどうかは分かりませんが、でも、ボクは随分と高い所にも乗れるようになったので、やりたくなるとは思っているのです。
 お姉ちゃんはそう言って絶対に外に出してくれませんが、お父さんは一緒に外に出たいみたいなのです。もう少し大人になったら、いつも散歩に行っている辰巳の森公園にも連れて行ってくれて、広い公園で遊ばせてくれる、て言っているのですが。

 だって、お姉ちゃんはボクに、外に出られるように、鈴の着いた首輪の他に、胴輪というものも買ってきてくれているのですが、未だに着けて貰っていません。という訳で、僕はいつも部屋の中から外を見ています。お父さんが世話をしている植木を見ていると、あちこちで、ユラユラ動いたり、ヒラヒラしたりするのを見ます。動かない時もあります。大きく動く時もあって、面白いのです。


 いつだったか、お父さんがガラスのドアを開けたままにして、ボクが頭を少しだけ外に出したことがありました、お父さんはあわてて、ボクを部屋の中に押し返しました。
 そんなことがあってから、お父さんは、外で作業をするときは、ぼくをケージの中に入れるようになりました。“アム君、ちょこっとハウスだよ”と言って入れます。ボクも、ここから出る時は朝一番で、明るくなってから入ったことが無いので、上の段から外を見るのは初めてでした。ここからは、外もよく見えます。もっとよく見ようとすると、タワーの4階からも好く見えます。

 あるとき、外を見ていたら今まで見たことの無いものが、塀の外をヒラヒラ、あるときはヒューっと、流れるのが見えました。鳥なんだそうです。カモメという鳥が、こんな高い所まで飛んでくるらしいのです。
 そしてある日、いつものように、外を見ていたら、小さなものが、外の手すりにある、白くて丸いものの上に乗っているのが見えました。初めてのことなので、「匍匐前進」と言うのを後でお父さんから教えられましたが、そんな格好したボクをみてお父さんもびっくりしたみたいです。これは「スズメ」と言うのだそうです。


スカパーのアンテナの上にスズメが止まりました。

 お父さんも、まさか、こんな高い所までやってくるとは思わなかったみたいでした。それからは何度も、僕の家にやってくるようになりました。お父さんは、辰巳の森からやってくるんじゃないか、と言っています。辰巳にはスズメが沢山居るのだそうです。
 “おいらは辰巳の スズメなのさ”なんて歌っています。

 たとえどんな人間だって 心の故郷があるのさ
  俺にはそれが この街なのさ
  春になったら 細い柳の葉が出る
  夏には雀がその枝で啼く

  雀だって唄うのさ
  悲しい都会の塵の中で
  調子っぱずれの唄だけど
  雀の唄はおいらの唄さ

  銀座の夜銀座の朝
  真夜中だって知っている
  隅から隅まで知っている

  おいらは銀座の雀なのさ

  銀座の雀
  作詞 野上 彰
  作曲 仁木 他喜雄
  歌  森繁 久弥

 お父さんは、いつも辰巳の森に散歩に行って、沢山のすずめを見ているのだそうです。そんなすずめ達を紹介してもらいます。

 電線に スズメが三羽止まってた
  それを猟師が鉄砲で撃ってさ
  煮てさ 焼いてさ 食ってさ
  ヨイヨイヨイヨイ オットットット
  ヨイヨイヨイヨイ オットットット
  
  チュチュンがチュン チュチュンがチュン

  デンセンマンの電線音頭
  作詞 田村 隆
  作曲 不詳
  歌   伊東 四郎  小松 政夫


辰巳の森公園には電線がありません。だから撃たれることも食べられることもありません。

●一言
 この歌には誤りがあります。スズメは普通、煮ては食べません、食べられなくはありませんが、あくまでスズメ焼きです。今でも焼き鳥の店で、スズメ焼きを供する処があるかもしれませんが、ジャックがよく食べたのは、新宿の「三平食堂」。足だけ取って、丸坊主の頭も着いた姿焼きです。焼き鳥みたいに、肉を食べる、というのではなく、細くて薄い骨にへばりついた肉を、丸ごと噛み噛みします。噛むほどに、骨と肉があいまって、次第にスズメの味が広がっていく、という味わいです。

 スズメ焼きのルーツは、小中学校の頃。我が家には空気銃があり、(おそらく学校中で空気銃があったのは我が家くらいでした)。秋から冬にかけて、これを持ち出し、スズメを狙いに行きました。当時、町の金物屋には鉛の空気銃の玉も売っていましたし、これを持ち歩いても問題になるようなことはありませんでした。
 仲間は、近くに住むA、今では区議会議員の大物になっていますが。撃ったスズメは、熱湯に入れると、ワリと簡単に毛がむしられ、鋏で首切ると、お腹に米がいっぱいなことがよくありました。焚き火で焼いて食べたものです。家に持ち帰って食べたことはありません。カエル食べたのは知っていた母ですが、スズメ焼きは知らなかったと思います。


こんな歌を合唱しているみたいです。宿は別のところでしょうが、近くの爺さんがパンのクズを持ってきてくれるので、集まってきます。爺さん、スズメの宿に行くつもりなんだろうか。

 すずめ すずめ
  お宿は どこだ
  チチチ チチチ
  こちらで ござる

  おじいさん おいでなさい
  ごちそういたしましょう
  お茶に お菓子
  おみやげ つづら

  さよなら 帰りましょう
  ごきげん よろしゅう
  来年の 春に
  またまた まいりましょう

  さよなら おじいさん
  ごきげんよろしゅ
  来年の春に
  花咲く頃に

 すずめのお宿
 フランス民謡
 作者 不詳

●一言
 この歌ですが、日本の昔話の「舌切りすずめ」から採っているのではないかと思います。お話では舌を切った張本人のおばあさんが、私も、と言って、すずめのお宿にいき、つづらを持ち帰りますが、出てきたのはゴミだらけ、というお話です。ご存知でしたか。

 
 まいごのまいごの こすずめは
  おせどのやぶで
  母さんたずねて よんだけど
  さらさらつめたい かぜばかり
  かぜばかり

 母さんたずねて 
 作詞 斉藤 信夫
 作曲 海沼 実




辰巳のスズメは仲良しみたいで、迷子になる子はいないようです。

 ベランダにスズメさんがやってくるようになってから、お父さんが毎日、クッキーのかけらをまくようになったら、ボクの近くまで食べにきます。だいたい、ぼくがご飯を食べている時が多くて、ご飯食べながらスズメさん見ていたり、ご飯後回しでしばらく様子を見ていたりします。
 

雀百まで踊り忘れず

●一言
 という諺もあります。毎日、ベランダにご飯をたべにくるようになりました。そのうち、スズメ焼きになって、お返しに来てくれるのでしょうか。

●最後に一言
 先に紹介した歌は、題名と歌詞でネット検索すると、歌詞と共に、歌声も聞えます。銀座の雀は、まさに「森繁節」が堪能出来、デンセン音頭は若き、伊東四郎の踊り付きで楽しめます。
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