やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 生まれて半年の投了 猫の隔靴掻痒
02 猫も 「世界ネコ歩き」が好き
03 カエル じゃないよ アムールだよ
04 私しゃ も少し 背が欲しい
05 ねこ のんじゃった ?
06 ある日 スズメがやってきて
07 胸焼け 生野菜食いたい
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ベンガル猫アムールのある日その時

04 私しゃ も少し 背が欲しい

ボクはベンガル猫のアムールです。
 ボクが今の家に来て間もなく、サーヤお姉ちゃんと、ジャックお父さんが「キャットタワー」というものを組み立ててくれました。「ナントカとネコは高いところに登りたがる」とか言うんだそうで、一番上の部屋は天井に届くくらいです。

 でも、初めの内はどんなものか分からずに、おまけに、「ネコピアノ」さんの家に5ヶ月居た時と違った音がいろいろするのでとても怖くて、特に誰かがやってくるときのピンポーンという音と、少し慣れてきたお父さんの声と違う声がするのが怖くて、ユフィお母さんのベッドの下や、タワーの一番下の部屋の隅に隠れてばかりいました。

 この部屋はふかふかで居心地はいいのですが、この家に来てすぐに暑い季節になって、タワーの部屋に居るより、床にごろんとしていた方が気持ちがいいので、時々お姉ちゃんがすぐ上の部屋に置いてくれたりしたのですが、あまり長居はしませんでした。

 ボクも少しずつ背が伸びてきたのかもしれないし、少しずつ冒険心も出てきたみたいで、キッチンとリビングの間にある棚に登ってしかられたり、お仏壇の上に乗って怒られたり、いちばんひどく叱られたのは、神棚といういろいろなものが並んでいて面白そうな所に登った時でした。でも、お父さんは“アム君は仏壇も神棚も分からない、登れるようにしておくのが悪い”と助け舟を出してくれたりしました。その結果、水のサーバーを足掛かりにして登っていた神棚は、サーバーの場所を変えらたりして、冒険の場所が少なくなってしまいました。(この様子は、おかあさんが書いてくれた「03 ベンガル猫の日常 かくれんぼ」を参照してください)

 その頃でした。タワーの二階から三階までは登って遊べるようになったのです。そして、思い切って四階まで登ってみたことがありました。見ていたお姉ちゃんは、びっくりしたみたいでしたが、とても嬉しそうでした。お父さんに“タワーがぐらぐらしないように、柱をしっかり締めなおすように”頼んでいました。四階からはベランダの向こうに、今まで見たことの無い景色が見えました。それからは、いろいろな物音がしてもあまり気にしないで、部屋でくつろいだり、ぐっすり眠ったりできるようになりました。

 ここに来て半年くらい、ボクもだんだん大きくなってきたみたいです。寒くなってきたこともあって、タワーの四階で寝ていることが多くなってきたのですが、初めの内、身体は丸くなるとすっぽり収まったのですが、少し窮屈になってきました。


 顔だけ部屋から出したり、足を出したりして我慢することにしていました。ある時、両足を伸ばしたら、向かいの部屋に届きそうになりました。足を出していると少し疲れてくるのです。向こうの部屋に届けば楽になりそうですが、ちょっとだけ届きません。


 そんな時、お父さんに見つかりました。お父さんは“なんだアム君、私しゃ、も少し、背が欲しい だね”なんて言うのです。何のことかもちろん分かりません。お父さんが説明してくれます。
●一言
 2013年から15年にかけて、最もテレビ出演が多かった、ボーイズスタイルの浪曲漫才の四人組「玉川カルテット」。メンバーの一人二葉しげる(三味線)はメンバーの内で最も背が低かった。そこで、肝心の出番になると(浪曲調で)「金もいらなきゃ 女もいらぬ 私しゃも少し 背が欲しい」を決めセリフとして人気があった。当時流行語大賞があったら、入選していたかもしれない。
 このセリフからすれば“金もたんまり 女房もいるが 私しゃも少し 背が欲しい”と呟いている近くの国のキンさんとかいう人がいますね。なにしろ、このお父さんは、シークレットブーツなる、踵の高い靴を履いていて有名だったんだ。

 ちよっと横道、で、お父さんはもう少しで届きそうな足の先を手のひらで支えてくれました。でもお父さんも何時までもやっているとくたびれます。残念ながらこの時だけでしたけれど、とってもラクチンなひと時でした。


 お父さんは、ボクの近くを通る時、いろいろなことを言います。ボクがいい気持ちで眠っている時“あれ、アムール橋が出来ちゃったみたいだね”と言ったそうです。部屋と部屋を繋いで、つり橋みたいだ、と言うのだそうです。誰もこの上なんか通らないのにね。

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 一歳の誕生日間近の日、最近、家のみんなは“アム君はほんとに大きくなったね”と言います。(どのくらい大きくなったかは、ボクのプロフィールと見比べてください)ボクはどのくらい大きくなったのかは分かりませんが、四階では手足も尻尾もじゃまで納まりません。でも、ここはとても居心地がいいので、床暖房のリビングの床よりも、お気に入りなのです。
 でも、すっぽり部屋に納まったときが、懐かしく思う時があります。
俺りゃあ もう 背なんか 欲しくない
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