やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 生まれて半年の投了 猫の隔靴掻痒
02 猫も 「世界ネコ歩き」が好き
03 カエル じゃないよ アムールだよ
04 私しゃ も少し 背が欲しい
05 ねこ のんじゃった ?
06 ある日 スズメがやってきて
07 胸焼け 生野菜食いたい
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ベンガル猫アムールのある日その時

03 カエル じゃないよ アムールだよ

ボクはベンガル猫のアムールです。

 夏の暑いころ、ボクはお腹をペタリと床にくっつけて、腹ばいになっているのが好きでした。お腹全体がひんやりして、気持ちがいいのです。
 ある時、ジャックお父さんが通りかかって“アムールくん、おまえそうやっているとカエルみたいだな”と言ったのです。ボクはカエルのことは知りませんが、お父さんが言うには、水の中で泳ぐのが上手で、両足をお腹に引き付けて、両手と一緒に水を蹴ると、すごいスピードで進むのだそうです。


そのまま水に浮かべると、猫泳ぎが出来そうな気がするのですが。

 猫は水が嫌いなのだそうです。猫が泳いだ、と言うのは見たことが無い、とお父さんは言います。でも、ボクたちと同じようにペットとして買われている犬は、泳ぎが上手で「犬掻き」という言葉があるそうです。中でも大型犬のラブラドールリトリーバーは「水猟犬」といって、水に落ちた鳥を取りに行くそうです。陸で暮らす動物の中では象も泳ぐそうです。最近猪が海を渡って無人島に住み着いた例もあるそうです。

 話が戻りますが、カエルが泳ぐのを「カエル泳ぎ」というのだそうです。これは昔からある泳ぎ方で「平泳ぎ」というそうです。日本泳法の「水府流」という伝統のある泳ぎ方です。日本では昔から人気の種目で、オリンピックではキタジマさんという人が二回も優勝したそうです。

 そんなある日お父さんが“アムくん、カエル泳ぎしている人がいっぱいいるから見てご覧”とテレビの前に連れて行ってくれました。なんか、ボクに泳ぎ方を教えたいようで気が進まなかったのですが、しばらく見ていました。大きな水の中で大勢が手と足を動かして、泳いでいました。ボクとは似ていないと思うのですが、お父さんは、ボクの泳ぐところを想像していたのかもしれません。

愛媛国体、400メートルメドレーリレーから。

 ある日、サーヤお姉ちゃんが“アムール君、今日はシャンプーしましょう、そろそろ水に慣れないとね”と言ってお風呂場に連れて行かれました。とうとう、嫌いな水をかけられるようです。お父さんはなぜかうれしそうで、カメラを持って見に来ました。まさか、お風呂の中で泳ぎを教えるつもりじゃないかと、心配でした。
 でも、すこしヌル目の水をかけられたときは、ちよっといい気持ちで、お姉ちゃんがあちこちスリスリしてくれるままで、風呂の中に入れられることも無く終わりました。タオルで拭いてもらって乾いてきたら、ユフィお母さんが“アムール君、毛がピカピカでとてもきれいだよ”といってくれました。それじゃ、時々やってもらおうかなと思いましたが、お父さんだと何されるか分からないので、お姉ちゃんに任せよう、と思っています。


モーレツに嫌がると思っていたのですが、拍子抜けするほどおとなしく、初シャンプーでした。

 カエルは跳ぶのが上手なのだそうです。脚がとても強いのだそうです。高い所へ飛び上がれるのだそうです。「カエル跳び」という言葉もあるそうです。
 でも、ボクはカエルに負けないくらいに跳ぶのが得意です。いつもキッチンとリビングの間にある配膳用の台に乗って、お母さんがご飯の支度するのを見るのが大好き。でも、手をだしたりすると叱られます。以前はお仏壇の上に乗って叱られましたし、水のサーバーを伝って「神棚」に登ってものすごく怒られました。私のために「タワー」も造ってくれたのですが、なぜか、キッチンがお好み。最近はおねえちゃんの部屋で、いすを足場に、高いところにある本箱の上で昼寝しているときが多いです。

朝食の支度が始まると、今日一番のジャンプで、お勝手見物。

●一言
 往年のプロボクサーで、世界スーパーウェルター級チャンピオンになった、輪島功一は変則なボクシングをするので有名でした。カエル跳びパンチと言って、一瞬しゃがんだと思った瞬間、カエル跳びのように飛び上がって、下からパンチを繰り出したのです。

 ボクがお父さんから昼のオヤツを貰った時“アム君の鳴き声は、カエルの鳴き声よりはるかにいろんな声をだすなあ”と言われました。カエルさんがどんな声で鳴くのか知りませんでしたが、お父さんが教えてくれました。「つくば山麓男性合唱団」という歌の中で、
セカンドテナーは あま蛙 ケロケロ
ベースは がま蛙 グワグワ
バリトンは 殿様蛙 ゲーゲーケロケロ 
テナーは かじか ケーケーケロケロ
 って、歌っているのだそうです。

筑波山のがま蛙、中学2年生の時の遠足で買ったもの。

 じゃ、ボクはどんな風? って聞いてみました。
・朝一番 ミーミーミー(朝だぞー 早くケージからだしてくれー)
・起き出したお姉ちゃんが、手洗いから洗面へ ンギャオー(はよしてんか 腹減ったー)
・昼のオヤツ フヒフヒフヒ(意味不明)
・4時のお母さんのオヤツ ヒーヒー(アム君の腹時計 いつの間にか現れる)
・お姉ちゃん帰宅 ニャーニャー(お帰りなさい もうすぐご飯だよ)
・リビングの扉の外で フンニャー フンギャー(晩飯まだかー 腹減ったぞー)
・お母さんから、お待ちどうさまの声 ミャミャミャミャ(お姉ちゃん、飯だ飯だ急げ)
 と、こんなにあるんだって。
蛙さんは、4匹で四つの声だったけれど、ボクは一匹でこれだけの声が出せるみたい。お父さんが感心するわけだな。

 ある日、とても怖い思いをしました。お母さんのベッドの上で寝ていたら、お父さんがやって来て、いつものように、背中からお尻の辺りをナデナデしながら“アム君のこの辺はおいしそうになったな”なんて言うのです。それと“手足はバウムクーヘンみたいだもんな”とも言いました。それがどんなものか知りませんが、まさか本気で食べるつもりは無いのでしょうが。
 お父さんが言うには、中国の諺で[四足で食べられないものは机と椅子、飛んでいるもので食べられないのは飛行機だけ]というのがあるそうです。世界中でいろんな動物が食用になっていて、なんと、犬を食べる国もあるそうです。お店で食べさせるところまであるのだそうです。でも“猫を食ったっていう話は聞いたこと無いなあ、旨くないのかなあ”ってお父さんが言っていたので、やっぱり冗談だと思って一安心でした。

 でも、お父さんはカエルみたいだ、と言ったくらいで、実際にカエルを食べたことがあるのだそうです。お父さんは中国人ではありませんが、フランス料理店ではハトを食べたり、居酒屋でカメの刺身を食べたり、スズメ焼きもよく食べたそうです。
 そこで、お父さんに、カエルを食べた時の話を紹介してもらうことにします。

●一言
カエルを食べた話の一
 「正式に」カエルを食べたのは、ユフィと新婚旅行に行った時のこと。神戸・三宮の「テキサスターバン」という洋食のお店。仕事していた編集部の寄稿家の男性から、旅行に行く旨話したときに薦められたのです。「カエルのフライ」です。足が日二本、ひな鳥の足を思わせる大きさ。ソースをかけて、手に持ってかぶりつこう、としたのですが、近くのテーブルに外国人の男性が二人、上手にナイフとフォークで食事しています。これはいかん、と横目で見ながらナイフとフォークで食べることに。
 多分、レストランで、ナイフとフォークで食事をしたのは、これが初めてだったと記憶しています。骨は細く、身は白く、鶏肉より柔らかく、臭みもありませんでした。なにしろ、食感味わうのはこれが初めてではなかったのですから。

カエルを食べた話の二
 小中学生の頃、近所の田んぼに「食用カエル釣り」に出かけました。単なる遊びで、長い竹ざおにタコ糸、大き目の釣り針付けての釣りです。田んぼの草が垂れ下がったようなところ目指します。その前に、水路にいるザリガニ捕って、ぐしゃっとつぶして、殻をとって、尻尾の部分の白い肉を取り出して、針に付けます、餌ですね。
 カエルが居る、と思われるところに餌を投げ入れたまま、ひたすら待ちます。ヘラブナ釣りと同じです。あまり効率よくないので、たいした釣果はあがりませんでした。

 いちばん効率がよかったのは、家の前の1.5メートルくらいのどぶ川、と言っても生活排水が流れ込むわけではないので、きれいな川。鮒が泳いでいるくらいでした。家の前は道路、その暗渠の中に、ときおり食用カエルが現れます。もちろん目に見えるところには居ません。初夏にかけて、朝夕に“ウオンウオン”と鳴くと、朝を待って釣りに。釣り糸に餌は白のモンシロチョウ。
 暗渠の数メートル先から覗くと、カエルの目が光るのが分かります。その先目指して、モンシロチョウ、ヒラヒラさせます。ピシャピシャとカエル近づくのが分かって、がぶっ。当たりです。ジャックはそれが面白かったのですが、兄の「カズン」が“ジャック、これ食おう”と言い出しました。台所へ持っていって、足ちょん切り、そこから、ペリッと皮むきました。
 さすがに、見ていた母親もびっくりでしたが、カズンは初めてではないようでした。はらわた出して、きれいに水洗いして皿に。

 ところが、しばらくして、台所の方から“ぎゃー”という悲鳴が聞こえました。飛んでいったら、母が腰抜かしていました。なんと、皮向かれ、腸わた抜かれたカエルが、皿から飛び出していたのです。
 カズンは、足だけちょん切り、七輪で焼いて、醤油かけて食いました。ジャックも少しだけ食べました。味、覚えていません。

●検証
 この記事を書いている途中で、思い出して、本をとりだしました。
「大人のための 歌の教科書」 川崎 洋 著 いそっぷ社 1999年刊

表紙に「かえるの合唱」の歌詞が載っています、この歌、童謡の代表なんですね。
大人のための教科書の歌
川崎 洋
いそっぷ社
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 この中で、「カエルの歌」の項でこんなことが書いてありました。
・手や足を切り取っても生きていて
・胃袋を切り取っても生きていて
・肺を切り取っても生きていて
・心臓を切り取っても二時間くらいは動き回っていて
・頭を胴体から切断しても跳ね回っていて
・脊髄を破壊してこれで死んだと思っても
・二時間くらいしてから目玉をギョロリと動かして
・毒物を注射して心臓を止めても
・胃の運動は二時間くらい続いていて
・呼吸は止まっても
・心臓は規則正しく動いていて
・個々の細胞にいたっては
・数十時間後になお生きていて
(戸木田菊治 著 カエル行状記 から ラジオドラマのナレーション)

 母が腰を抜かした拠り所はここにあったのです。
 以上、お粗末
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