やましたさんちの玉手箱
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ご存じですか? 野生の野蒜

のびるを採って食べる楽しみ

サーヤは知らなかった「のびる」の存在を、あなたはご存知?
ユフィ世代でも、田舎暮らしを経験していないと知らないだろう。
現にジャックは知らなかったので、「金町江戸川近く住んでいたのに…」と渋谷育ちのユフィに言われたくらい、知名度の低い野草。

ユフィが知っていた訳は、一人っ子だったために学校の休みになると親戚の家に居候状態だったので、田舎暮らしの経験があったから。
田無の伯母の家で春休みを過ごしていた際、いとこ達と連れ立って林の中の野草を採った記憶が鮮明なのだ。

つくし等も採ったと思うのだが、ハカマを取り除いたり灰汁抜きをしたり、かなり面倒くさいので、記憶にも薄い状態なのだろう。
のびるは生えている場所の土が軟らかいと、まとめて引き抜くことで地中の玉ごとしっかり採れるから、とても手ごたえのある野草だった。

伯母はきれいにそうじをして、サッと湯がいて「酢味噌和え」にしたりしていた。
多分、伯父の晩酌のお供だったのだろうが、余り子供の好む味わいではない。

ヒガンバナ科のネギ亜科ネギ属の多年草で、「ねんびろ、ねんぶり、のびろ、ねびる」などとも呼ばれるようだ。
生ネギのヒリヒリした辛味から「ひる」の名が付いた、と辞典にはある。

地下に「鱗茎状の球根」を持っていて、地上には細い葉が伸びている。
花茎がまっすぐ立ち上がり、60cmを超えると、小さな花をつけるらしい。
ユフィはまだ「のびるの花」は見たことが無い
春休みにしか採りにいかないから、6月頃の花は見られない。

東アジアに広く分布していて、日本では全国的に自生しているようだ。
特にあぜ道や土手や堤防、畑地周辺に多く見られる。
古い時代に作物と共に渡って来た「史前帰化植物」との説もあるから、すごく古い野草ということになる。

葉と鱗茎が食用となるが、積極的に栽培されることはなく、野草として食されている。
玉ねぎに似た香りと辛味、アサツキなどより鮮烈な香味があるとされる。
生食やサッとゆでて酢味噌和えにする他、味噌汁の具や薬味にも用いられるようだ。

ジャックは葱系統が大好きだから、公園の土手で細い葉を見つけたとき「ジャックの酒の肴に良い」とひらめき、抜こうと試みたが硬くて玉までは抜けなかった。
後日、夜の雨で土が湿っていたとき、落ち葉が溜まった土手端で簡単に抜くことができ、意気揚々と引き上げてきた。




しっかり洗ってひげ根も取って玉だけにし、生の状態できゅうりと合わせて「酢味噌和え」にして晩酌のお供に出してみた。


知らなかったらしく、「公園で採ってきた」の言葉に食べられるのか疑心暗鬼の風。
「失礼しちゃう、手間隙がかかっているのに…」

恐る恐る口にして好みに合ったのだろう、まんざらでもない様子だ。
次回には、軽く茹でて葉と共に出したところ、気に入ったみたいで「生の方がいい」とのたまう。
やったね、お金が掛からない酒の肴が一品増え、二人共に大満足。

ネット検索で、「酢味噌和え」「天ぷら」「炒め物に少量薬味として」「味噌汁の具」「甘酢漬け」「薬味」等々、様々な料理や使用法が載っていた。
栽培ものもあるにはあるらしいが、スーパーで見た記憶はない。
が、ネットでは販売もある様子で、実に立派な葉と玉だ。

栄養的には、「カリウムが豊富で塩分を排泄し、高血圧に効果的」「カルシウム・マグネシウム・リン・鉄分などのミネラルも豊富」「胃腸を丈夫にし体を温める効果あり」等、効能は素晴らしいが、相当量を食べなくては無理だろう。

『古事記』の応仁天皇の歌に「いざ子ども 野蒜摘みに 蒜摘みに」が見られとか。
『万葉集』にも、「醤酢(ひしほす)で蒜(ひる)と水葱(なぎ)の羹(あつもの)」と載っているらしいから、古くから親しまれてきた野草だと分かる。

今年の春はそろそろ終わりに近いから、花を楽しみにしたいのだが、なんと先週公園内の草刈が終わってしまい、綺麗に何にも無くなってしまっている。
「野蒜」の他にも「蓬」も多く生えているが、どんどん成長してしまって憎憎しい草丈と葉の茂りになっているから、摘み取る気にはならない。

今年は「蓬の天ぷら」を3回ほど味わったから、世田谷よりも楽しめたのかも…。

後日、花を見つけた記事はこちら→野蒜の花 見つけちゃったあ

花の画像を引用させていただきました。
 
季節の花300 より
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