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日本の漫画家NO.3は「奇才」楳図かずお氏

日本三景とか日本三大夜景のように、娯楽分野でも上位「三大」をランクアップすることがありますね。
さて、漫画での「三大」はというと特に定義付けていないのですが、ネットの反応によると…

1位は手塚治虫氏。
さすがの「漫画の神様」です。ただ、個人的に言うと手塚治虫氏はもう「神様」なのでランク付けするのもおこがましい気が。唯一の殿堂入りして良いかと。
2位は藤子不二雄氏。
こちらは「漫画の王様」なので納得です。手塚治虫氏の後継者として最もふさわしい気がしますし、巨匠とも呼べるコンビです。

3位以下はなかなか絞れないようですが、皆さんが提案する3位はいずれも「納得いかーん!」です。
「うる星やつら」の高橋留美子、「ワンピース」の尾田栄一郎、「ドラゴンボール」の鳥山あきら、「YAWARA!」の浦沢直樹、「ハンター×ハンター」の冨樫義博…と色々と候補者は出てくるのですが、いずれも手塚治虫氏と藤子不二雄氏に続くには力不足に思います。

まず日本を代表する漫画家として、ポイントなのは「絵の上手さ」か?「知名度」か?「ストーリーの完成度」か?「人気度」か?いろいろあると思いますが、手塚治虫氏と藤子不二雄氏に共通しているのは、以下だと思います。
●数十年の歴史と知名度があり、誰でも名前だけは知っている。
●独特的な発想があり、オリジナル性が強い。
●無駄に長い巻数を作らない。巻数が多くても短編読みきりになっている。
●ヒット作品が多すぎて代表作が一つに絞れない。
●長編短編ともに大量生産しており、大半がヒットしている。
●ストーリーの完成度もさながら、社会と人間がよく描けている。

だから3位の候補者たちには、これらの条件が揃わず力不足だと思っているのです。ほとんどが1.2つの作品が大ヒットして長く連載できたという感じですので。

じゃあ、サーヤ的には誰がNO.3として押しなのか?というと…二人ほど思いつきます。
「デビルマン」の永井豪氏と、楳図かずお氏。
そして、この二人を比べると楳図かずお氏に軍配が上がります。「社会と人間がよく描けている」という面で楳図かずお氏が上だと感じたのです。
手塚氏は「神様」、藤子氏は「王様」と呼ばれていますが、楳図氏は「鬼才」「奇才」という呼び方をされていて、なるほどという感じです。少なくとも永井氏はそういう呼び方はされていませんね。

それに、手塚氏も藤子氏も永井氏をも凌ぐ、長所が一つだけあるんです。
それは、絵の美しさです。怖い本を描く人だというイメージが強くて読むのも敬遠されがちですが、とてもキレイな絵が描ける人です。
その初期から中盤までの絵を見ていただきたい。

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美しい…
この美しさが怖い話をよりリアリティにしてくれるんですよね。また、画力だけでなく微妙な表情も繊細に描けているので、同じ顔をした別人の物語がいくつかあっても見分けがつけるのが素晴らしいところ。上記の「かげ<映像>」の表紙もそうです。
残念ながら終盤は画力が劣ってきて乱れてしまいますが、これは腱鞘炎が悪化して以前のような美しい絵が描けなくなってしまったようです。現在休筆しているのもこれが原因らしいです。

さて、楳図かずお氏の作品は非常に多くのヒット作品を生み出していますが、サーヤが特に衝撃と感動を与えられ、オススメしたいのは以下です。
また「社会と人間がよく描かれている」ものとしてイチオシしたいものでもあります。

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大震災とともに小学校が丸ごと未来に飛ばされ、何もない荒れた土地で生き抜くサバイバルストーリー。
サバイバルの作品は数多くありますが、小学生の子供たちが主人公というのはあまりありません。そして子供らしい発想と戦い方が描かれており、リアリティがあります。(子供たちを主人公にした漫画というのは実は難しい
感心するのが、子供たちが学校を「国」に見立てて、それぞれの特技を持つ子供が防衛大臣や厚生大臣となって会議を開く展開があるところ。さらにビックリしたのが子供たちの精神的な支えとして「宗教」も作ったこと。この宗教の象徴として選んだのが「母親の彫刻」というところがまた…。
「国」である学校を守るために命をかけたり、全滅を危惧していったん学校を離れて「ただいま」と戻ってきたり、最初は一致団結したのに次第に「派閥」が出来て対立したり…この作者は社会と人間をよく理解しているな、と感動した作品です。

人間の怖さを描いた作品。というか、女が怖い
類稀な美貌を持つ有名女優が、顔にアザができたことを悩み失踪。その女優は一人娘さくらを生み平凡に暮らすが、さくらの顔に傷が付くと激しく錯乱する。その理由は「美しい娘のさくらと脳を入れ替えて、女の人生をやり直す」というもの…。
美貌と若さに対する執念、愛する男が欲しいという執念、幸せになりたいという執念、とにかく女の凄まじい怨念が渦巻く物語
幽霊や怪奇といったホラー展開はありません。女の様々な心理を上手く表現しているだけで、可憐な娘(小学生)が狂った中年女の表情と行動をするのが、ものすごいインパクト。
でも、やり直したい女の人生が、女優の復活ではなく、愛した男と暮らす平凡な幸せというのがまた…。「女心をよくわかっているなぁ」と感嘆した作品です。

ホラーでも怪奇でもSFでもファンタジーでもない、実際に歴史の一つとして起こりえただろうストーリーになっている珍しい作品。
舞台はおそらく戦国時代。心優しい村娘が突然に城に呼び出され、顔がそっくりな奈津姫の影武者になれと命じられる。この奈津姫は「鬼姫」とも呼ばれる残忍な気質なので、それも真似られるようにと過酷な教育を強いられ、村娘は徐々に心が「鬼姫」になっていくのを恐れる。奈津姫の地位と城を乗っ取ろうとした親戚は影武者を疑い、そして…。
これは怖いというより、哀しく切ない物語。鬼姫へと心が変わっていく恐ろしさも表現しているが、因果応報の怖さと哀しさをドラマチックに描いています。ストーリーの完成度も非常に高く、楳図かずお氏の作品の中でも一番好きで心に残るものです。
これはぜひとも時代劇としてドラマ化して欲しい…それだけの秀作です。

以上の三作品がサーヤの特にオススメしたい作品です。やはり「社会と人間がよく描かれている」ものを重視したので、結果的に怪奇・ホラー性が少ないものを選んじゃいましたね。
でも、以下の作品の数々も秀作なので、興味を持たれたらぜひ。

楳図かずお作品の中で、子供の時に初めて読んだ作品。…にしてはかなり衝撃的なものを見てしまった気が…。
「タマミ」は赤ちゃんのまま成長できない奇形児であり、美しいもう一人の娘に嫉妬していじめてしまう話。こちらも怪奇・ホラー性は低く(子供心には十分にホラー過ぎたが…)、人間の心の醜さと哀しさを描いた作品。

楳図かずお氏のホラー作品の原点といえる作品です。「赤んぼ少女」の次に読んだのがこれでした。(こちらの方が古い作品)
怪奇・ホラー性高いですが、少女マンガなので怖がりつつ楽しめた記憶があります。へびの特徴がよく表現されており、身体をくねらせながら少女を追いかけるシーンは主人公同様に「ギャー!」と叫んでしまいそうでした。

これも有名な代表作の一つ。怪奇・ホラー性が高く、楳図かずお氏のもてる力をふんだんに使ったと思われる作品。
長編だが、短編読みきりになっており、一つ一つの話がとても濃い。楳図かずお氏の特徴と怪奇性を楽しむならこちらがオススメ。

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いや…これオススメするか迷ったのですが、楳図かずおの作品の中で最も悲鳴をあげたくなる作品ということで…。怪奇・ホラー性だけでなく、スプラッタ性も非常に高い作品なので、とにかく怖い作品にチャレンジしたいという方にのみ。
でも設定がかなり独特的で引き込まれたものです。
心臓の弱い方は読まないほうが良いです。(楳図かずお作品を読んだことがない知人に見せたら悪夢にうなされたとのこと。ごめんなさい(汗))

オススメしたい作品としては、実は長編より数多くの短編集の方なんです。楳図かずお氏の独特的な発想力とオリジナル性、ストーリーの完成度は実は短編の方が強く出ているので、一つ一つが非常に読み応えあります。
藤子不二雄氏も沢山のSF短編集があり、非常に読み応えがあったものですが、これと同じような感じです。(この「ミノタウロスの皿」は衝撃的な作品だった…)
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他にも「わたしは真吾」という作品が有名で、途中までは食い入るように読み込んだのですがラストが「?」なのでオススメには至りませんでした。
「まことちゃん」も有名ですが、ものすごく下ネタが多くて下品なのでオススメするにはちょっと(笑)。

最後の作品といわれる「14歳」も有名ですが、腱鞘炎が悪化して絵が乱れていたのと、社会性が強いテーマであるため何となく途中で挫折してしまいました。たぶん昔の作品が好きな人には馴染めない作品だと思います。逆に楳図かずお作品を知らなかった人の方が興味深く読めているようです。

今回、紹介するために記事を書いてみたら、また楳図かずおの作品が読みたくなってきました(笑)。
特に短編は持っている本がボロボロになってきたので、そろそろ買い換えようかしら。

休筆して久しい楳図かずお氏ですが、2014年9月に「マザー」という映画を脚本・初監督として公開することになっています。
なんと主人公が楳図かずお氏ご本人で、「楳図かずお氏に憧れる編集者の女性が、彼の作品の原点となった母親を調査するうちに怪奇に巻き込まれていく」という興味深い話。
ということもあって、久々に楳図かずお氏のことを思い出して、今回の紹介記事を書くに至ったのでした。
その映画「マザー」の公式サイトはこちら→http://mother-movie.jp/
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