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サーヤの記事
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熱気あふれる社交ダンス漫画「ボールルームへようこそ」

最近注目している新人漫画です。
最初に知ったときは「ホームルームへようこそ」と見間違えて、学園物かと思ってましたが(笑)、社交ダンスのスポ根漫画です。
社交ダンスは国内では「ソーシャルダンス」と呼びますが、国外では英語で「ボールルーム=舞踏室の踊り」が一般的だそうです。

さてサーヤは社交ダンスにちょっと興味がありました。
自分がやるつもりは毛頭ないのですが、昔にテレビで「芸能人社交ダンス部」が流行っていた頃、芸能人ならではの個性的な踊りもあってハマって観ていました。
そんな社交ダンス漫画が登場したので、物は試しに読んでみるか…と思ったら、期待以上の作品!
気に入って漫画を買い始めたのが2012年だったのですが、まさか2013年の漫画大賞2位になるとは…。

全くの新人漫画家なので、最初はほんとうに期待してなかったんです。それに社交ダンスという激しい芸術スポーツを漫画で表現するのは難しいと思っていましたし。
それが見てみるとビックリ。新人とは思えない画力と表現力で、読者をグイグイ引き込んでくれました。

まず、出だし。主人公の富士田多々良(ふじたたたら)は社交ダンスとは無縁で、成績も悪く、引っ込み思案でいじめっ子に絡まれてばかりの日常。そんな彼は「変わりたい」という思いを秘めています。
そんな彼がプロダンサーの強引な勧誘で社交ダンススタジオに連れ込まれてしまい、そこから彼のダンス人生が始まります。
そこは王道な展開ですね。

彼がダンスの魅力に取り付かれたのはダンス試合の「俺を見ろ」という強烈なオーラを感じたことから。引っ込み思案な彼が「変わりたい」と思っていたなら、これほど強烈な自己顕示欲を示すものに興味を抱くのは自然だと思います。
自分のやりたいことが見つかり、踊ることで自信も持つようになり、自己主張もしっかりするようになる。これまで大人しく我慢し続けてきたことの反動ですね。

多々良の主人公としての魅力は、実はそこにあるのです。
本来の大人しく優しい気質はパートナーである女性への配慮や思いやりとして生かされ、思わぬところで大胆不敵に行動する…という両極が出てきて、それが彼の武器となります。
うじうじした性格の多々良にはイラッとさせられますが、女性と組む社交ダンスの主人公としてはぴったりなのかもしれませんね。

また、彼の特化した才能は「見て覚えて物にする」能力です。理屈で技術を教わられると全然見につかない。しかし、プロが実際に動いて真似させると、すぐに身につけちゃう。
これもまた納得する。芸術的な才能ってのは理屈ではなく感性で理解して成長させていくものですから。
それに、感性タイプは「魅せ方」も上手いものなのです。演出とか表現とかを何となく理解できるので、素人なのに即興で観客を煽らせて演じることもできちゃうわけです。

この漫画、2.3巻あたりは「ええっそんなのアリ!?」な展開で素人の多々良がいきなり試合に出て活躍することになるのですが、この強引な展開は5巻までを読むと納得できます。読者に社交ダンスのなんたるかを魅せて引き込むには必要だったと思います。
それに、強引な展開に持っていったのは、破天荒すぎる仙石というプロダンサーのせいなので、まぁ納得です(笑)。

さすがに無茶な展開は続かず、5巻あたりで組む女の子が居なくなり高校進学したことで一度リセット(クールダウン)され、そこから現実的な路線になります。
多々良も自分の欠点も色々と自覚し、改めて基礎を見直し、本当のパートナー(今まではトラブルで一時的に組まざるを得なかった)を探そうとします。
カップルはどうやって探して組むのか、幼いダンサーの多くが思春期時代にどうして社交ダンスから離れていくのか、社交ダンスはどのように試合を選んでレベルアップするか…などの基礎知識もここでやっと描かれます。
強引な展開にちょっと心配しましたが、5巻を読んだ時点で、ちゃんと作者は後々の展開を考えて話を作っているんだなと安心しました。

だから、やはり1巻は導入部、2~4巻で無茶な展開で読者を引きずりこみ、5巻で現実にかえり王道へ突き進む…というストーリー構成なのでしょうね。
読者を引き込む戦略としては上手いかもしれません。

この漫画の魅力はそれだけではありません。この作者はどうやら社交ダンスの経験があるらしく、そのダンスの魅せ方と演出がすばらしい!とにかく、燃えるんです、燃えます。
もうページをめくっていくだけで、紙面から熱気がムンムンと溢れてくるくらいの情熱を感じます。(3巻なんかそのピークですね)
作者がいかにこの作品に想いをぶつけているのかが、よくわかる作品です。

さて次に気になる画力ですが、新人にしては絵が上手いなと思いました。
劇画タッチなので粗さはあるのですが、長年漫画を見ているサーヤから見ると「よく観察して丁寧に描いている」と思い、上達するタイプだと思っています。(実際、1巻と5巻でだいぶ絵柄が違う)

まず、登場する女の子が可愛い!魅力的!キレイ!肉体が美味しそうにかけている!(笑)
これ、社交ダンスを描くには大事な要素ですよ…女を華やかに魅せられなきゃならないんですから…しかも社交ダンスといえばクラシックとラテンがある。
ラテンってどんな踊りか知ってます?露出度の高いドレスを着て激しく色っぽくセクシーに踊らなきゃいけません。女の鍛えられた肉体がしっかり描けてなくちゃ意味がないんです。
で、この作者は、見事にそれをしっかり描けてる!いや~色っぽいわ~うっとりしますわ。
なので、社交ダンスを描くにあたって必要な画力は備えていると思います。

さて、多々良は展開上、素人ながらトップレベルの女性パートナー2人とそれぞれ組んで盛り上がることができましたが、この漫画そうそう都合主義ではありません。
やはりレベルの高い女性たちはすでに大事な男性相手が居るので、多々良と組んで上手くできたからって別れたりはしません。元の相手に戻っていくのです。
5巻時点、これから多々良は長くやっていける本当のパートナーを探さなければなりません。そして、その候補らしい女性が見つかるが、何か事情があって社交ダンスを辞めて反発している模様。さて、この女性は多々良と組んで長くやっていけるのか、どんな踊りを見せてくれるのか?すごく気になります。

素人でとってもウブな多々良(しかもチビで童顔)は5巻まではクラシックしか踊っていませんが、ラテンも踊らなければなりません。
…多々良、ラテンをどう踊る!?女性パートナーとアッツアツに色っぽく魅せなきゃならんですよ!?
それが一番の楽しみだったりします(笑)

キャラクターの個性もよく描けており、一人一人がとても魅力的で、感情移入もしやすいので入り込みやすい作品ですね。
さすがに「俺を見ろ」(それを競う社交ダンス)のダンサーは強烈な個性の持ち主ばかりです。そんな彼らを見るのもなかなか楽しいです。

5巻新刊まで見ていますが、これからがとても楽しみな漫画です。
できれば、3巻(すごく盛り上がるところ)まで一気に読むことをオススメします。それから続きを読むかどうかご判断くださいませ!
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