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ジビエ馬 ジビエ虫 馬燻製 蜂の子 蝗(いなご)  珍品 絶品 酒の友

馬肉 豚肉 牛肉 羊の肉 山羊の肉 一番匂いがきついのは何
 我が家の近く、数年前まで寿司店構えていたお宅、ご主人無くなって、今マダム一人暮らし。最近ユフィとコミュニケーションよろしく、煮物などお届けいただく。
 煮物、というもの、面白くて、ユフィも好きでよく作るのですが、同じ食材使っても、組み合わせや味付けなど、微妙に、いえ、かなり違うものがあるのが、最近の発見です。我が家は、義母の味付けでずっと頂いてきましたが、実は私の母の味付けも、かなり「濃い目」で、結婚以来、違和感無く、頂いてきました。
 このマダムの煮物、少し味付けがソフト、でもサーヤもユフィもいつもおいしく頂いています。商売柄、調理には腕があったのですね。こんな方がお近くにいるととてもうれしい。

 そんなある日、庭で片付け物をしていたら“ちよっと旦那さん、お酒お好きなんだとか、馬の肉なんて食べる、私の田舎じゃ、みんなよく食べるんだけど、東京の人にこんなものあげちゃ失礼かと思っていたんだけれど”と。
“いやいや、ご冗談でしょ、馬肉なんて、居酒屋でもなかなかお目にかかれないもの、失礼だけど結構高いしね、私大好き”と言ったら、マダム、すぐ家にとって返し、私の手首の太さもあるような、馬の肉を持ってきてくださった。早速、晩御飯に切り身にしていただく。ユフィもサーヤもモグモグ。馬の肉って案外匂いが無い、甘みもあっておいしいんだ。長野県下の旅館では『さくら鍋』を売り物にしているくらいですからね。

 翌日、おいしかった旨ご報告したら“こんなものも、どう”と馬肉薄切りにした燻製もいただくことに。お味は、ビーフジャーキーならぬ、ホースジャーキーなのですが、これまたほんのり甘くて舌切れもよろしい、こちらはご飯のおかず、というよりは、ウイスキーのツマミにぴったり。
馬刺しの燻製
左は丸太風、馬刺しの燻製、右はスライスしたもの。

丸太風燻製の切り身 スライスした燻製
左は丸太風燻製の切り身、右はスライスした燻製。

 馬は案外匂いがない、と言いましたが、肉の匂いではこんな経験があります。
 トルコのイスタンブールに行った時のこと。大阪に半年暮らしていたという、若い男性ガイドが就いてくれました。このガイドさん、大阪にいる間、ついに豚肉が食べられなかったそうなのです。“豚の肉はとっても臭いです、とても食べられませんでした”ということです。実はこの言葉が頭に残っていて、東京に帰ってから豚肉を食す機会があった時、試しに匂いを嗅いで見ました。そんな事する人いないよね。でも、実は豚肉ってとても臭かったです。子供の時から食べているものだから、誰でも気にせず食べているのですが、諸兄、今度豚肉食べる時、目つぶって匂い嗅いでごらん、臭っさいから(笑)。

 肉の匂いでもう一つ。モンゴル・ウランバートルに旅行した時のこと。同行の女性の一人が、町に出た途端に“羊の臭いがする”というのです。この女性、レストランではますます具合が悪く、一人鶏肉にしてもらったのにダメ。期間中全く肉に手がでませんでした。 
 確かに羊は独特の匂いがあります。まあ、そういっては失礼かもしれませんが、10年以上前のこと、生肉に精製する技術の問題もあったのかもしれません。

 そこへいくと、ジャックは肉には鈍感。ホタテは匂いがいやで食べない、とか、蟹も匂いがいや、西洋野菜は匂いがきつくて一切食べない、など喰わず嫌いがものすごい私なのですが、沖縄で行った、ヤギの肉の店も全てオーライ。なんという偏食。

昆虫食は楽しい
 それから数日、再びマダム。“旦那さん、蜂の子はどう、お店やってるときにお客さんに勧めたんだけど、ほとんど食べた人いないのよ”。私“食べた事はないけど、珍品・絶品ていうことはよく聞くよ、少しだけ頂けますか、私子供の頃、川原で蝗とって焼いて食べてたくらいだから、いけると思うけど”、マダム“あれま、蝗のつくだ煮の瓶詰め一つあるんだけど一緒に持ってきましょう”。と、数分の内に、小鉢に少量の蜂の子と蝗の瓶詰め、ご持参くださる。

 蜂の子、私も実際に見たことはありませんが、テレビなどでは見たことが。大きな蜂の巣から、蜜の部分を引き剥がすと、その奥の、六角形の巣の中に、白いものがモゾモゾと。これが蜂の子。
 この白いモゾモゾと言えば、サーヤが幼児の頃、飯能の近くに住んでいたお友達の家に遊びに行き、林の廃材が積んである地中から、カブトムシの幼虫を取ってもらい、プラスチックの箱で成虫するのを、サーヤ共々観察したのを思い出した。この幼虫も大きな白いモゾモゾだった。

 それほど大きくはないが蜂の子の白いモゾモゾを食べるか、となると、一瞬、躊躇したのですが、一食は一見に如かず。で、蜂の子。早速晩ごはんで頂く。全く初めての試食。で、『濃密な味』、どんな味に似ているか、と言われれば『蜂の子の味』と言うしかない。何か虫の体液が感じられるような味がするか、と思いましたが、一切なし。いける。
 で、翌日マダムに報告。まるでおねだり風になってきたが、食べてもらって喜んでもらえるんだから、この際人助け。遂に、瓶詰め蜂の子頂いちゃいました。
蜂の子の瓶詰め小皿に入れた蜂の子
表示は蜂の子の甘露煮 小皿に入れた蜂の子、よく見ると、白いモゾモゾが見える。あまり見た目観察しないで食した方がいいかも。

蝗の思い出 焼き蝗醤油掛け 蝗のふりかけ
 蝗は子供の頃、よく食べた。我が家の実家は、江戸川河川敷まで歩いて4~5分、広大な河川敷の我が庭であった。その頃の河川敷は近所のばあさまたちが不法で、トウモロコシやキュウリ、トマトなどの畑としていました。のどかな時代でした。そして、秋になると、草むらで蝗が大発生するのです。歩くと、草むらからピョンピョン跳ねてきます。目をつぶって歩いても、何匹もが手の平に当たってきます。

 母親に古くなった手拭の両端を縫ってもらい、袋に。これに蝗を入れていくのです。2~30匹も入れると、袋の中で蝗が飛び跳ねるので、袋全体が生き物のようにうごめきます。これが快感。
 家に帰って、蓋の付いている金網の中に入れて、カマドで出来た消し炭に火を付け、蝗をこんがり焼きます。そのまましょう油かけておかずに。どんな味かっていうと、まあ、小エビ喰ってるかんじかなあ。でも、父親が蝗の丸焼きにしょう油かけて酒のおかずにしているのは見たことなかったかなあ。
 また、この焼いた蝗、当時大豆を炒って、粉にする製粉器があって、これに入れてゴリゴリ、蝗のふりかけのできあがりです。香ばしくって、これの方がうまかった。

 閑話休題 というわけで、蝗のつくだ煮は今までも食したことがあり、久々のご馳走になったわけです。
蝗の瓶詰め
活き活きとした蝗の甘露煮
瓶詰めの蝗 今にも飛び出しそうな活き活きとした蝗の姿甘露煮

 こんなツマミでお酒いただいている時、ちょうど読んでいる本にこんな記述を見つけたのでご紹介しておきます。小沢昭一氏か゛楽しんだ、長野県・下諏訪にある みなとや旅館を著者が訪ねた折の、夕食の情景。

『あしたのこころだ  小沢昭一的風景を巡る』 三田 完 著  文芸春秋 刊
1.600円 プラス税
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『大皿には桃色の馬刺。脂がほどよく乗っている。小皿には鮒の干物、公魚(わかさぎ)のマリネ、川海老、凍豆腐、こごみの和え物、さらに名前を知らない山菜の煮物が何種類も。そして、蝗、蜂の子、ざざ虫(カワラゲの幼虫)の昆虫トリオ甘露煮もほんの少し……』
中略
『今度はタレに漬け込んだ肉と玉葱を山盛りにした皿を桜鍋だ。鉄鍋に馬の脂を溶かし、鍋が充分熱したところで一面に玉葱を敷き、軽く炒めてから味噌ダレにまぶした肉を乗せる。ジューと脂の溶ける音。いい香りが立ち上がる……』

 なんともうまそう。そう、長野では、馬、昆虫は、大のもてなし、大ご馳走だと言う事がよくわかったのだ。ジャック連日のおもてなし攻勢にうきうき。
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